衆院福岡2区で初当選した稲富修二氏をめぐり、07年の福岡県知事選挙における1,900万円の使途不明金疑惑を受けて今月4日に釈明会見に臨んだ稲富氏本人と古賀友行元選対本部長は、第三者に金を預けたとする非常識な釈明に終始した。前例のない巨額な選挙余剰金の原資は『税金』だったことが明らかとなっているが、当事者ふたりの話が虚構であったことは明らかである。
古賀元選対本部長は会見で、余剰金を預かるに至った第一の理由を次のように説明した。
「(1,900万円の余剰金について)『いなとみ修二後援会』という資金管理団体に移し変えてはどうかということを、検討をいたしました。その件を具体的に県選管に尋ねたところ、個人からの政治資金管理団体に対する寄附行為、これはキャップがありまして、年間150万円まで。これは例外ではない。で、1,900万円という金額を稲富修二個人から資金管理団体に移すということは、総量規制と言うんですかね。150万円をオーバーした分については、政治資金規正法違反になりますよ、というご指摘がありました。えー、ま、ここで、どうすればいいかと・・・」。
結論から言うが、古賀氏の釈明は間違っている。嘘をついたのかどうかは別として、選挙のプロ、政治家がこうしたばかげた釈明をするべきではない。政治活動に対する寄附について厳しい制限があるのは確かだが、自身の資金管理団体に対する公職の候補者の寄附金額については150万円という制限はない。
公職選挙法第22条は、個人のする政党及び政治資金団体以外の同一のもの(今回のケースでは『ひとつの政治団体』)に対する政治活動への寄附は、年間150万円までと規定するが、自身の資金管理団体に対する公職の候補者の寄附についてはこれを適用しないとしている。つまり稲富氏が自身の資金管理団体「いなとみ修二後援会」に寄附できる金額には、150万円という制限はないということだ。しかも、150万円という金額制限は、古賀氏のいう「総量規制」ではない。あくまでも「同一の者に対する寄附の制限」(個別規制あるいは個別制限などと言われる)である。
公職選挙法第21条は、「寄附の総額の制限」について、個人のする寄附、会社のする寄附、労働組合等の寄附、その他の団体(政治団体を除く)の寄附について、それぞれの対象ごとに制限を設けている。例えば個人で寄附をする場合、政党や政党の政治資金団体については2,000万円。政党や政党の政治資金団体以外の政治団体に対しては1,000万円までとなる。会社の場合は資本金額、組合などは組合員数などで、年間に寄附できる総額が決まる。これが「総量規制」と呼ばれるものだ。稲富氏の場合、年間に可能な政治活動への寄附総額は1千万円ということになる。古賀氏が言うとおり、『具体的に選管に尋ねた』のであれば、福岡県選管がこうした間違いを教えるはずがないのである。
(つづく)
※記事へのご意見はこちら