国際交流とは何か。改めてその重い課題と向き合うことになった。きっかけは、データマックス取材班が明らかにした、福岡市総務企画局国際部の海外出張に関する不適切な公文書管理の実態だった。しかし、これまで報じたのは、そのうちの一部でしかない。海外出張の正当性そのものにも疑問が生じているのだ。国際社会の中で、福岡市独自の外交施策として位置づけられてきた国際交流事業に暗い影がつきまとう。シリーズ企画を通じて、福岡市に求められる国際交流のあり方について問題提起する。
よかトピアから20年 アジアマンスの9月
自らをアジアの玄関口と位置づけ、国際都市を標榜する福岡市。その存在を世界にアピールした、1989年3月から10月にかけて開催された「アジア太平洋博覧会~よかトピア」から約20年の歳月が経った。よかトピア開催の翌年から始まった「アジアマンス」は、毎年9月、アジアフォーカス・福岡映画祭やアジア太平洋フェスティバルなど多彩なイベントを展開し、福岡市に根付いた感がある。
アジア文化賞
アジアマンスを代表する事業である「福岡アジア文化賞」もそのひとつだ。同賞は、アジア地域の優れた文化の振興と相互理解および平和に貢献するため創設されたもので、今年で20回目を迎えた。大賞は、「アジアの固有かつ多様な文化の保存と創造に貢献し、その国際性、普遍性、大衆性、独創性などにより、世界に対してアジアの文化の意義を示した個人又は団体を、学術研究又は芸術・文化の分野から原則毎年度1人(団体)選び顕彰」(アジア文化賞ホームページより)するとしているほか、学術研究賞、芸術・文化賞が設けられている。今年を含めて77名の受賞者を数える。
姉妹都市交流
一方、アジア諸国との交流とは別に、民間レベルにおける国際交流の一助となることを目的に、アメリカのアトランタ市やオークランド市をはじめ、フランス・ボルドー市、ニュージーランド・オークランド市、マレーシア・イポー市、韓国・釜山広域市とは「姉妹都市」を、また中国・広州市とは「友好都市」を締結している。最も古い姉妹都市締結は62年のアメリカ・オークランド市、直近では、それまでの行政交流都市から姉妹都市へとなった07年の釜山広域市のケースがある。いずれの都市とも毎年、相互訪問が行われている。もちろん、ここで言う相互訪問とは、行政主体のものである。
今こそ問われる国際交流のあり方
それぞれに歴史と実績を有する福岡市の「国際交流」ではあるが、アジアマンス20周年は交際交流のあり方そのものを問う、ひとつの節目ではないだろうか。誤解を恐れずに言えば、アジアマンスがどれほど福岡市を「国際都市」たらしめる効果をもらたしているのか。あるいは、福岡アジア文化賞が国際社会のなかでどれだけの評価を得ているのか、すべての「姉妹都市交流」が奏功しているのか。そうしたことを原点に立ち返って見直すと同時に、最も大切な福岡市と福岡市民にとって、現在の「国際交流」が本当に役立っているのかどうか検証するよい機会にすべきだと考える。
公費支出の実態に迫る
「国際交流」の名の下に行われる事業であっても、「公費の支出」をともなうことは言うまでもない。杜撰な予算の執行は、事業そのものの存在意義に疑問を投げかけることになる。データマックス取材班が、福岡市総務企画局国際部の海外出張について調査取材を始めて約2か月。情報公開請求で入手した公文書からは、国際交流をうたい文句にした、デタラメな公費支出の実態が浮かび上がっている。批判の対象となる事業は「福岡アジア文化賞」と「姉妹都市交流」に関するものばかりだ。これは何を意味しているのだろう。
総務企画局国際部による海外出張の実態を検証していくと、いくつかの問題点が見えてくる。投げかけられた課題の重さに取材班でさえ戸惑うことがあるほどだ。アジアマンスが開催されている今、あえて福岡市における国際交流のあり方を問う。
【市政取材班】
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