2009年7月23日号『I・B』で「会社更生計画認定から6年余 混迷続けるハウステンボスの行方」と題し、ハウステンボスが辿ってきた道と現状の課題について分析した。野村プリンシパル・ファイナンス(野村PF、東京)と福岡経済界には、もはやハウステンボス(HTB、長崎)の経営再建に関して前向きな策がまったくないというのが結論だ。その背景には、HTBがあくまで「投資先」の野村PFと「我関せず」の態度をとる福岡経済界の姿が見え隠れする。
経営譲渡先の浮上
8月10日、野村PFが福岡市内で地場の主要企業(九州電力、JR九州、九電工など)と非公開の会合を開き、HTBの経営支援先の企業と交渉中であることなどを説明した。
HTBの損益分岐点は200億円前後と聞かれるが、世界的不況の影響で08年度の売上高は前年比30億円減の154億円にとどまり、実質的に累損を内包している。また、約150億円の負債を抱えているとも言われており、このままでは別の企業が事業承継するとは当時考えにくかった。
ところが9月16日、HTBに対し、ホテルマネージメントインターナショナル(HMI)が支援出資する方向で野村PFと交渉していると一斉にマスコミで報じられた。
HMIは日本郵政の宿泊・保養施設「かんぽの宿」の一括売却をめぐり、オリックス不動産と最後まで争った会社として有名だ。1998年10月設立で、「パールシティホテル」チェーンなど全国46カ所のホテルおよび旅館を運営している。破綻した宿泊施設の再建に運営を委託されたケースが大半で、年商は08年9月期単体で約218億円。
「またもや資本の論理か」と感じた関係者も少なくないだろう。問題は、HMIがHTBの再建および運営をできるのかという、ただ1点。これまでの実績から考えれば、「ホテル運営に関しては」対応可能なのかもしれない。しかし、HTBはあくまでテーマパークだ。ホテルだけの再建では元の姿を取り戻すことは到底できない。
とくにHTBのような施設の場合、いかに訪れる人々に愛され、リピートされるかにかかっていると言える。そういう意味では、ディズニーランドは成功事例であり、リピーターが後を絶たない。
HTBをよく知る人は「魅力的なキャラクター、子どもが喜ぶような施設やイベントが少ない」と指摘する。たしかにその通りだし、また高い入場料もネックになっているようだ。
しかし、何よりも問題だったのは、そもそも経営陣に「郷土愛」や「愛社精神」が欠落していることではないだろうか。もっと言えば、これらと資本が備わっている地場企業が中心となって支援しない限り、真の意味での再建は非常に難しい。
どう考えても付け焼刃的な経営譲渡案にしか見えないが、裏にはもう少し複雑な事情があるようだ。
【大根田康介】
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