さすがの改革派市長も、新人議員の大量当選でドタバタ劇が続く永田町には驚いたという。確かに、議員宿舎が足りないということは笑い話では済まされない。国会議員として予算に絡むべき時期に、東京での宿泊場所がないというのでは、いかんともしがたい。
メディアの密着取材などを受けて、大変だったのではないかと聞いてみたが、民主党がスタートダッシュにかける意気込みが伝わってきた。
「(党本部から)テレビに出るなと指示が出ました。郵政選挙で初当選した議員が、チャラチャラした発言で物議をかもしたことがありました。民主党は浮ついた気持ちで国政に臨むのではありません。国民に『この国を変える』と言ったわけですから、その約束を果たすことに全力を挙げなければなりません。テレビに出てはしゃぐ時間があったら勉強しろ、ということです」。野田氏は16年間、八女市長としての実績を重ねてきた。責任の重さを熟知している『新人』である。
その野田氏も、国会議員と市長との違いについて、次のように話す。
「16年前の市長就任時とは違います。市長になった途端、『市長、これはどうします?』『市長、どっちを選びます』。次から次へと自らが『決済』することを迫られました。国会議員は、予算案をはじめ、じっくりと勉強する時間がいただけます。決めたテーマに腰をすえて取り組むことも可能です。この違いはありますね。政権政党の一員になったのですから、これまで自民党に独占されてきた『情報』にも触れることができるでしょう。国民の生活を第一に、変えるべきこと、やるべきことに対しては、しっかりと声を上げていきます」。
議員宿舎だけでなく、所属委員会さえ決まっていないということだったが、市長経験16年の実績に裏打ちされた静かな語り口が印象に残った。地に足のついた国家議員の誕生である。野田氏の活躍に期待したい。
了
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