(23)野生の王国(2)
Wはフランス語読みだと「ドゥブルヴェ」。日本人にとっては発音が面倒くさいのだが、こう言わないとニジェール人には通じない。W国立公園は、ニジェールの首都ニアメから車で6時間ほどかかる。今回は川下りを楽しもうということになった。
初めに1時間ほどかけてサイという町へ行く。そこからモーターの付いた船に乗って4時間かけて到着。1日は移動だけで終わってしまう。宿泊先は学生寮といった雰囲気のコテージである。金持ち外国人向けの豪華なホテルもあるのだが、ここはかなりリーズナブルな宿である。
2日目はいよいよ動物捜索である。古びたバンのなかと屋根に乗って移動する。屋根の上にはガイドがいて、彼が右に行けとか左に行けとか指図する。動物の足跡や糞から現在地を推測するのだという。私には全然わからないのだが、アフリカ人は目がいいのでそのあたりが分かるのだろう。この日はガイドが「こんなにたくさん動物が見ることができる日はめったにない」というぐらい様々な動物を見ることができた。ゾウやライオン、ガゼル、サルなどまさに本場のサファリパークである。目の前でゾウが水浴びをしていたり、車から逃げていくガゼルなど、感動した。
私個人的に圧巻だったのは、ライオンである。私たちが乗った車の約10メートル先で、じっとこちらを見つめていた。私たちは呑気に「ライオンだ!」と喜んでいたのだが、ガイドはどうも気が気でなかったらしい。後で話を聞くと、どうやらこれまでに2人のガイドがライオンに襲われて命を失っているそうなのだ。
以前は密猟者が放った毒矢でゾウが暴れ、観光客の乗ったバスを襲うと言う事件があったそうだが、現在は以前と比べ規制も厳しくなり、密猟者の数が減っているという。これはニジェール人が話してくれたことなのでどこまで信用してよいかわからないが、密猟者規制の努力はしているのだろう。観光資源の少ないニジェールにとって外貨を稼ぐことのできる唯一の場所でもある。
ただ、アフリカ人にとって動物は、私たちが愛玩動物として犬や猫を飼うような発想はほとんど持っていない。以前、私は村の子どもが子猫をキャッチボールしているのを目撃し、注意したことがある。希少動物の保護は、先進国からの圧力である部分が強く、アフリカ人自身が自発的に行っているというわけではなさそうである。今後どのように展開していくかが、注目される。
【廣瀬】
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