今の経営陣では再建できず
いったい誰が今回の交渉相手についてマスコミにリークしたのか――通常、こうした交渉事は水面下で行なわれるもので、表面化するのは事が成就してからだ。このように憶測されるのも無理はない。マスコミの取材力というならまだしも、事はそう単純ではないようだ。
「リークしたのはほかでもない野村PF」とある関係者は語る。また、「正確な意図は分からないが、野村PFは福岡経済界との交渉が決裂した段階でジリ貧のように見える。しかし実際には、お願いするというよりは『あなたたちが支援しなければ私たちはもう知りません』という高飛車な態度だと感じた者もいたようだ」と別の関係者は語る。
HMIとの交渉が報道されたのも「交渉がうまく進んでいることをアピールし、『やれるだけのことはやった。これでもダメなら撤退はやむを得ない』というアリバイづくりではないか。HMIも脇は甘くない。多額の負債を整理しない限り、支援に乗り出す可能性は極めて低い」というのが関係者たちの見方だ。
こうした情報を「右に倣え」でいっせいに報じたマスコミは、実は野村PFに踊らされているだけではないか。しかも、支援を求めるべき「HTB協力会」ではなく「記者クラブ」だけに真っ先にリークされていたとしたら、何をかいわんや、である。
長崎の自治体や財界も救済の道を模索しているが、見通しは厳しい。「もはや野村から出向している経営陣の力では再建は無理」という意見が多数だ。関係者の間ではオーナー企業の交代を待ち望む声が広がっているのも間違いない。
長崎経済界において、長崎県商工会連合会会長という要職につき、HTBとも関わりの深い宅島壽雄氏は、弊社の取材に対して次のように答えている。
「本当は破産の前に県か市に土地も建物も譲渡してしまう方がよいと思います。破産してしまうと、いろいろな問題が出てくるでしょうから。経営に関して、野村PFはプロではなかったし、『HTBを何とかしよう』という本当の気持ちが入っていないわけです。ともかく今の経営陣ではダメです。彼らは次に行くところがないし、腰かけのようになっていると思います。自分たちの保身しか考えていないのではないでしょうか」
【大根田康介】
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