松本工業(株) 代表取締役社長 松本茂樹氏
~自動車不況という逆風を乗り越え、日々改善で時代に合わせた変化を
自動車生産150万台、地元調達率70%、アジアの最先端拠点…次世代のクルマ開発拠点を福岡県が主導し、推進している「北部九州自動車150万台生産拠点推進構想」。しかし、昨年秋以降の世界的不況の影響で自動車販売台数は激減。さらに、アメリカの自動車ビッグスリーの一角、GMやクライスラーが実質破綻した。このような「自動車不況」のなか、二次メーカーとして確固たる地位を築いてきた松本工業(株)は現状をいかに分析しているのか、そして今後の自動車産業への対応はいかなるものか、同社代表取締役社長の松本茂樹氏にうかがった。
COMPANY INFORMATION
所在地:北九州市小倉北区三萩野1-2-5
設 立:1966年11月
資本金:4,800万円
業 種:自動車部品製造ほか
<まだまだ可能性がある自動車産業>
―昨年秋以降の市況悪化を受けて、影響はいかがでしょうか。
松本 受注が減少したことで確かに影響は受けましたが、今年の暮れからは、日産の一部車種が関東から九州工場での生産に移管されます。明るい兆しは見えてきましたので、悲観はしていません。
福岡県は、この地域を150万台の自動車生産拠点にする構想を立て、自動車メーカーの進出と集積化が注目されました。150万台の自動車をひとつの地域で生産できるところは世界にも数箇所しかありません。しかも、県などの後押しがあり、そして自動車メーカー側にも受け入れる土壌がありますので、希望は持っています。先に言った通り、九州へ移管される車種もあるので、他の地域から見れば北部九州地域は羨ましいはずですし、追い風になっていることは間違いありません。逆に地場企業が参入しないと、関東や中部地域から北部九州へと参入してくる業者が現れるのではないかと思います。
―県や市の後押しとは、地場部品調達率を上げる施策や、自動車産業との新規取引のサポートですよね。
松本 そうです。地場部品調達率を50%から70%にするために、北九州市が主体となって「パーツネット北九州」を組織しました。現在、参加企業は55社です。これは、産官学が一体となって自動車部品産業の集積に向けた取り組みを展開し、また、地場自動車関連企業を訪問して工場内見学や意見交換会を活発に実施します。ほかにも、ヒト・モノ・カネの面からの支援がありますので、行政側とのチームプレーをすることが望ましいです。
―「パーツネット北九州」に参加している55社のうち、実際に参入を果たせた企業はどのくらいありますか。
松本 今はまだ数社しかないのが実情です。実は、ここが一番の問題点なのです。
―それは何故でしょうか。
松本 これまで北九州地域は、八幡製鐵所関連やTOTO、安川電機やJR関連の協力工場があり、それにともなって発展してきましたので、モノづくりのノウハウとマインドはあります。そして何よりも、そこで培われた技術力があります。この経験こそ自動車産業に活かせるはずです。 しかし、これまでの北九州地域のモノづくりは「素形材」であり、「個人消費材」としての自動車を作ることとは異なっています。同じモノづくりでも、自動車は他の産業よりも納入品の品質の問題をはじめ、求められるものが非常に高度です。また、設備投資費用がかかることもあります。この意識の違いと品質や設備投資の問題が、参入への障壁となっていると思われます。
【文・構成:新田 祐介】
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