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特別取材

野村PFと福岡経済界の溝 ハウステンボスの行く末は(3)
特別取材
2009年9月30日 08:00

求められるパラダイム転換

 HTBによれば、シルバーウイーク(9月19~23日)におけるHTBの入場者数は約5万1,400人で、前年の同じ週・曜日(20~24日)に比べて95.4%増えたという。19~30日の期間限定で、60歳以上の長崎・佐賀両県民の入場料を無料に、同伴者を全員半額にしたのが奏功したようだ。場内にある3ホテル、計636室も20、21の両日は満室だったという。たしかにうれしいニュースではあるが、彼らの多くがリピーターやファミリエ会員になるかと言えば難しいだろう。

 今後、考えられる方向性は2つだ。1つは福岡経済界の支援による存続。逆に言えば、いくら地元長崎の経済界ががんばろうとも、福岡経済界の支援がなければ存続はできない。しかし、資金援助に関しては各社とも冷ややかな反応を見せており、実現性は低い。となると、残された道は再度の法的手続しかない。
 
 長崎経済の疲弊ぶりを象徴するかのようなHTBの混迷は、(過去に出資して失敗した経緯があるとはいえ)福岡経済界にはもはや余力がないことを端的に表わしている。また、中央資本の短絡的・保身的発想では、地方のテーマパーク運営がうまくいかないことを示唆している。 
 
 そもそも、このような事態になったのはなぜか。世界的不況のためと位置づけるのは簡単だ。野村ホールディングスの09年3月期の連結で7,000億円を超える最終赤字となり、HTBの増資に応じることもできない。

 しかし、それ以前に、野村PFからすればあくまでHTBは「投資先」である。「まだ打つべき手がいくらでもあるはず」という関係者の声もあるが、野村PF側と現場の尺度は明確に違う。結局、「暗くて深い溝」が埋まることはないだろう。
 
 また、「HTBは貴重な観光資源で九州の政財界が一体となって支援すべき」としながら、いざ話を振られると「我関せず」という態度の福岡経済界の姿勢にも問題がある。もちろん、資金的援助をすれば済むという話でもないし、過去の経緯からすれば難色を示すのも当然だ。しかし、実際に施設を利用してよりよくなるための案を出したり、経営陣に消費者の声をもっと聞くように促してきたかと言えば疑問符がつく。
 
 HTBに対しては「何とか九州の顔として復活してほしい」という消費者の声があることを、野村PFも福岡経済界もどこまで分かっているのだろうか。いずれにしろ、HTBにはオーナー企業の交代を含めた、ビジネスモデルの大きなパラダイム転換が求められている。

(了)

【大根田康介】


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