国土交通省が発表した2009年7月の新設住宅着工は対前年同期比△32.1%の6万5,974戸となり、昨年12月から8カ月連続の減少となった。季節調整済み年率換算は74万6,000戸。分譲マンションの着工は過去最低の水準を更新する3,961戸であった。大手50社の建設工事受注額は、前年同月比△42.8%と過去最大の下げ幅となった。建設工事は9カ月連続の対前年割れとなり、民間工事は企業の低調な設備投資意欲などを背景に不動産業、製造業などの減少が目立っている。ロイターによる事前調査では、住宅着工戸数の予想中央値は前年比△30.9%、年率換算の予想中央値は76万2,000戸であったが、実際の結果が予想値を下回る厳しい数字となった。
住宅関連業者が強いられる「逆ザヤ商売」
大手ハウスメーカーの積水ハウス(株)は、上半期予想で△23億円の最終赤字見通しを発表。木質系建材大手問屋も、第1四半期決算は軒並み赤字に陥った。TOTOは、新築住宅分野だけでなく増改築工事分野も減収になるということで、大分工場を大幅に縮小。北九州工場に集約することで人件費を圧縮するなど、なりふり構わぬリストラに取り組んでいる。
住宅着工戸数は昨年(08年)12月に対前年同月比で△5.8%とマイナスに転じ、以降、月を追うごとに減少幅を広げた。09年2月には△24.9%、さらに09年4月には△32.4%を記録。以降、5月△30.8%、6月△32.4%、7月△32.1%と、減少幅を拡大して推移している。つまり、4月以降は毎月前年の3分の1もの着工減が続いていることになる。
一部の電器、自動車関連の生産が持ち直し、中国向け輸出関連企業の業績回復などが喧伝されているが、これも日中両国の消費刺激策による効果で盛り上がっているだけで、カンフル剤の効果が切れると生産回復が持続できるかどうかは危うい。
現に雇用統計は悪化し続けており、デフレ懸念も頭をもたげてきている。悪いのは住宅だけでなく、東京の銀座や渋谷、新宿、丸の内などの高級ブランド店が撤退や閉鎖を続けていることから、テナントの賃料が下がり、地価の下落をもたらし始めている。
一方で、中国の不動産投資が再び盛り上がっていることから、米材や北欧材の国際市況が上昇し始め、日本の商社などの価格交渉力がコントロール不能になりつつあるという。
つまり、日本国内が住宅不況であるにも拘らず、中国向けなどの価格に引っ張られて相場が上昇を続けているというのだ。したがって、住宅が売れなくても木材およびその加工品の相場が上がっていき、スタッグフレーション(不況下のインフレ)の様相を帯びつつある。木材流通業者および住宅会社は逆ザヤの商いを強いられようとしている。
【徳島 盛】
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