9月議会の開会を前に、こども病院人工島移転をめぐり、移転反対の姿勢を変えぬ医療現場の声まで打ち消そうとする福岡市側の動きが見え出した。
産科医団体幹部の独走
9日、福岡市医師会と福岡県産婦人科医師会福岡ブロック会(以下、産婦人科医会)が、吉田宏福岡市長にこども病院に関する要望書を提出、その後記者会見するという。データマックス取材班は、「福岡市立こども病院・感染症センターにおける周産期医療整備に関する要望書(案)」と題された文書を入手したが、当の産婦人科医会の会員らは、9日に要望書が提出されることやその後の記者会見について何も知らされていなかった。独走ともとれる産婦人科医会幹部の手法に批判が出るのは当然だろう。それを受けた形で4日になってやっと要望書の原案が医師らに送付されてきた。一連の動きと要望書の問題点を検証する。
要望書作成はこども病院関係者か?
第一の問題は、産婦人科医会が作成した要望書でありながら、こども病院関係者の立場から作文したとしか思えない記述である。原文のまま紹介する。(太字加工は取材班による)
「母体搬送依頼の症例のうち、受け入れをお断りした症例は年間157件であり、母体搬送依頼の3件に1件から1.5件の割合で受け入れをお断りしたことになる。受け入れをお断りした理由は産科あるいは、NICU(注・新生児集中治療室)が満床であったためである」。
このくだりは、患者を受け入れる「こども病院側」としての表現であり、受け入れを断られた産婦人科としての立場にはなっていない。本来なら搬送依頼をして受け入れを断られた産科医側としては「(こども病院に)受け入れを断られたのは~件」とするべき。この文章の作成に、こども病院側が関与した可能性が極めて高い。
反対意見の封じ込め策
さらに、「新こども病院への交通アクセスの整備を早急に進めることも必要である」と記し、移転を前提の要望となっている。産婦人科医会としては、こども病院人工島移転には賛成していないはずである。にもかかわらず、こうした内容の要望書が議会前に提出されることは、反対の声を封じ込めようとする福岡市氏側の意を汲んだ医師がいるということになる。要望書の記述内容が開業医の立場ではなく、こども病院(つまり福岡市)側の表現となっていることが、端的にそれを物語っている。
福岡市内の産婦人科医に取材したところ、福岡市周辺の産婦人科医約160名で構成される福岡県産婦人科医師会福岡ブロック会の総会では、要望書や会見について意見の集約がなされていないという。
小児科医会では、総会等の手順を踏んでいないとして今回の要望書については連署を拒否したとされる。
福岡市側が作成に関与したと思われる文書が、移転に反対していたはずの産科医団体から提出されるという不思議・・・。行政のあり方と共に医の倫理も問われているのではないか。
市政取材班