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どうする?西川郵政の残滓処理(下)
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2009年9月16日 09:01

<改善計画に施された仕掛け>
 問題はそれだけではない。業務改善計画では、12月までに経営諮問会議を発足させることになっているが、これも西川体制を維持する装置として使おうとする魂胆が見え隠れする。
 「メンバーにはいわゆる学識経験者のほか、自治体や労組、全国郵便局長会などが入る。民営化に批判や疑問をもつ団体の代表も入れることにより、健全経営が図られるというのが設立趣旨です。郵便局長会は今回の選挙で、国民新党は当然、民営化に造反した自民党候補の応援以外はすべて民主党支持で一本化していた。こちらはそう簡単にはブレないでしょう。しかし、問題は労組。すでに西川体制に取り込まれていますから」(総務省担当記者)。
 「取り込まれた」といわれるのは、JP労組の山口義和前委員長だ。6月に委員長を辞めた山口氏は、そのまま郵政グループ4社の一つである郵便局会社監査役に就任。「天下り」あるいは「天上り」とメディアでも話題になった。
 「本人は有頂天、ともっぱらの噂。これも西川社長および『チーム西川』の深謀遠慮でしょう。しかし、組合内での評判は芳しくないですね」(前出・郵政関係者)。たしかに組合、とくに近年退職したOBからは「組織率は低下する一方。職員を守らない組合なんて入る意味はないですから」と手厳しい。
 そんな先行き不透明な諮問会議を、議長として仕切るのが西岡会長。所管大臣のクビまで飛ばして生き残った西川郵政が、100%株主の政府に『恭順の意』を示すために差し出したのが業務改善計画だが、そこにはさまざまな仕掛けが施されているということだ。

<問題山積のJPEX>
 しかし、これから何よりも混乱しそうなのがJPエクスプレス問題である。
 郵政と日本通運(日通)は宅配便事業の「ゆうパック」と「ペリカン便」の統合で合意し、昨年6月に新会社JPエクスプレス(JPEX)を設立している。業界トップであるクロネコヤマトのシェアが約39%、2位の飛脚宅配便(佐川急便)が約33%。これに対し、日通のペリカン便は3位で約10%、4位が郵便事業のゆうパック約9%で、業界3、4位連合で今年4月に事業開始を予定していた。
 「ところが宅急便と郵便は成り立ちが違い、料金設定が前者は大きさ(容量)、後者は重量が基本になっている。だから、料金設定から配送システムまでを統合するのは容易ではない。そこで正式な事業開始が遅れ、宅配便による新規事業を準備していたわれわれはもちろん、肝心の郵便、JPEXの現場も困っていたんです。もともとが木に竹を接ぐような話なので、郵政上層部による机上計算通りには進まない」(郵便事業出入り業者)。
 しかし、そんな現場の戸惑いをどこまで把握できているのか、郵政は9月1日、JPEXの10月正式開業を発表した。いかにも西川郵政らしい強引さである。
 ところが案の定、事業計画を精査した総務省は9月11日、佐藤大臣が計画の見直しと開業延期を指示した。運行体制はもとより、ペリカン便が赤字だけにJPEXへ大量異動させられる職員の不安、地方では収配送を既存の郵便局に頼るムシのよさなど、問題山積と判断したからだ。JPEX本社員から現場の配送員まで、「今後どうなることか」と一様に不安を隠せない。
 JPEXだけではなく、ゆうちょ銀行は9月から上限500万円の無担保ローンを始めるなど、「チーム西川」温存中に駆け込み的に次々と手を打っている。政権交代しても西川氏は居残りを策しているかに見えるが、そんなことが許されるはずもない。もし許すようなことがあれば、鳩山新政権はたちまち国民の信頼を失うだろう。

(了)


恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。

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