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なぜ急ぐ?外国人地方参政権(上)
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2009年9月29日 10:31

 国民のさまざまな期待と不安を背負って、鳩山政権が船出した。世論調査では、選挙結果を反映しておおむね期待7割・不安3割で期待度がはるかに高い。期待には応え、不安は消し去ってもらいたいものだが、民主党政権誕生で想定されていた不安が、早々と浮上した。永住外国人の地方参政権問題である。
 小沢一郎民主党幹事長は9月19日、李明博韓国大統領の実兄で、ハンナラ党国会議員の李相得韓日議員連盟会長と民主党本部で会談。永住外国人への地方参政権付与について、来年1月の通常国会で「目鼻を付けたい」との意向を表明したという。「目鼻を付ける」とは、当然ながら参政権を付与する方向を指すはず。しかし、これほど多角的な視野から議論されるべき問題が、性急に進められるのでは期待度がしぼみ、不安度が拡がるのは必至だ。
 参政権問題は1990年、大阪の在日韓国人が選挙管理委員会に選挙人名簿への登録を求めたが却下され、その取り消しを求めて提訴したことに始まる。しかし、大阪地裁がこれを棄却し、原告は最高裁へ上告したものの、95年にこれまた棄却された。裁判所の判断根拠は、憲法が定める「国民」は「日本国籍を有する者」であり、「住民」も「日本国民」が前提になっているため、外国人には憲法が保証する参政権は認められないというものだった。
 ところが、判決理由とは別に裁判官の意見として、地方参政権については「憲法上禁止されているものではないと解するのが相当」という傍論が付された。簡単にいえば、地方参政権を付与しないのは憲法違反ではないが、付与するのも違憲ではなく、それは立法政策に関わること、といういわば政治にゲタを預けた付録が付いていた。それが混乱の始まりだ。法学会で議論になるのは当然ながら、在日本大韓民国民団中央本部(民団)や公明党をはじめ、参政権付与の政治的活動につながるのも当然である。
 司法は司法として判断しつつ、なぜ「傍論」なるものを付したのか。それは原告が永住外国人、または定住外国人といわれる人たちのなかでも「特別永住者」だったからだ。現在、日本に定住する外国人は200万人強だが、参政権問題に取り組んでいるのは在日韓国・朝鮮人たち。戦前から日本に定住する一世やその子孫である。日本の統治下にあった朝鮮、台湾出身者で戦前から日本に居住しつつ、その後にできた子供や孫も日本に帰化していない人。その数は40万人強。その99%が韓国、朝鮮出身者である。
 そのため歴史認識の問題同様、裁判官も法は法として判断しつつ、いわば恩情で「特別永住者」への配慮で傍論を付したとしか考えられない。そうでなければ合法・非合法含めて、増え続ける定住外国人すべてを対象に参政権問題にこんな傍論を付せば日本は大混乱だ。したがって近年論じられている対象は特別永住者、すなわち韓国、朝鮮出身の永住外国人である。
 それに対する政治の現状を党派別に大きく色分けすれば、地方参政権付与にもっとも積極的なのが公明党。共産党、社民党も付与推進で、民主党は賛否両論。自民党は一部賛成派がいるものの、大勢は慎重あるいは反対。国民新党も同様だ。

(つづく)


恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。

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