―アイランドタワーマンションは1,000億円の価値―
<40周年を起点に総合不動産業へ転進>
2010年2月に、新栄住宅(株)<代表取締役:木庭 兌(とおる)氏・本社:福岡市中央区大名2-11-25)は満40周年を迎える。同社は『アンピール』のブランドで、デベロッパーを中心としてビジネスモデルを展開してきた。自己資本80億円に迫る財務内容の同社に対し、企業の安全性において九州一を誇ると弊社は評価する。同社の経営陣は外部環境を鑑み、40周年を眼前にして「積極的な経営革新実施」戦略に踏みだした。
その前提として、業界の勉強会、コンサルの助言を検討してきた。ある専門家の「デベ専門の業者は今後、30%しか生き残れない」という指摘には、木庭社長もショックを受けたようだ。
「じゃー、50周年の先を見通せる企業体質造りをいかになすべきか」を自問自答し続けた結論は「総合不動産業者への転進」であった。もちろん、暗中模索する過程でインパクトを与えたのは、『アイランドタワーマンション』販売苦戦の経験である。
<一時は信用不安説も流れた>
08年8月竣工を予定して売り出された『アイランドタワースカイクラブ』の販売総戸数は409戸である。事業規模200億円に近い。一物件としては同社最大の事業規模となった。08年春のTVコマーシャールが話題となった。あの『アイランドタワー』の広告は、視聴者の記憶に強く残っているだろう。8月の竣工が近づくにつれて、「販売が頓挫しているから新栄住宅は大変だ」とか「現場がストップしている」とか、誹謗中傷の流言が巷に蔓延していた。その度に弊社は、「もし、新栄住宅が破綻するとなれば、どこのデベも潰れるよ。マンション業界全体が沈没する」と明快に説明してきた。それでも、同社の信用不安を打ち消せる局面打開には至らなかった。弊社の力量不足であることは反省する。まー、日頃の妬みを持った輩の「愉快犯」たちが、便乗したのも事実だ。
木庭社長を筆頭に、新栄住宅の関係者側としても、反論したい気持ちはヤマヤマであっただろうが、「ここは歯を喰いしばって一戸でも販売して、アイランドタワーの決着をつけることが先決だ」と堅い意志一致を図った。結果として、9月だけでもアイランド案件は29戸販売できた。億ションも2戸販売をして、残り59戸の在庫になった。同社としては「09年一杯で完売する目処がついた」とみている。この事態になって、動揺していた関係者は「さすがに新栄さんは凄い」と掌返しの再評価をしはじめた。
逆境から生還した組織は、一段と強くなる。まず、世間の目が確実に変わる。『アイランドタワー』のステイタスが認知されると、『高級マンションのアンピール』というブランドが定着する。主体側でも、億ションを含めた高級住宅を販売した実績は、大きな自信に繋がる。この後の展開に絶大なるパワーを発揮することは間違いない。また、一物件で400戸を超える大型マンションをこなせた事実も、また莫大な財産である。1,000億円の価値ある組織経験をし、蓄積できたと断じて過言ではない。
『アイランドタワー』を完売する目処をつけるまでには、さまざまな創意工夫を行なってきた。TVコマーシャールの打ち方から来場者の情報管理のあり方まで、過去の成功体験をかなぐり捨てて、担当者たちと激しい議論を戦わせ、根本的なチェンジを繰り返してきたのだ。未曽有の危機には、あらゆる企画を全面的に洗い替えする手法が根付いた。熊本などで手持ちしているマンション用地の販売企画を、真っサラの状態で練りなおすそうだ。『アイランドタワー』販売の奮戦において、企業として長期にわたる「歩む術」を会得したのである。
(つづく)
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