地域主権型道州制に向けて 九州の若い力に期待
都道府県という枠を超えて
―これから日本の経営者たちはこの地域主権型道州制の構想とどのように向き合えばよいのでしょう。
江口 たとえば、日本経団連なり全国経済同友会なり、またJCの若い経営者の方たちが、なぜ地域主権型道州制と言っているのか。その理由は、いまのような中央集権体制下で全国一律という状況では非常に経営がしにくいからです。
北海道と九州ではいろいろと条件が違うわけですから、それぞれの地域事情・条件にあったような法律なり法令なりが制定されなければなりません。つまり、地域ごとに企業というものを捉え、産業政策、通商対策をやっていかなければならない。
民主党の日米FTA(自由貿易協定)政策をめぐり、農業団体が反対声明で霞が関に押し寄せたと聞きました。たしかに日本という国を考えた場合、一律にFTAを結ぶのがよいのかどうか、農業中心の地域の人たちにとっては厳しい問題でしょうね。
たとえば、中国から安いものが入ってくることに対し、関税で輸入品を国内産と同じくらいの価格にするような政策をしてもらいたい、というのは当たり前のことでしょう。
しかし、名古屋を中心にした東海地域、もしくは大阪地域ではFTAを結んでもらった方がいいと思ってるわけですよ。そう考えると、この州はFTAを結んであの州は結ばないというように、州ごとに産業政策を変えるといったキメ細かな政策をしていかなければ、企業はもたないということにつながると思います。
―逆に言えば、道州制なら企業も県という枠に縛られない経済活動ができるわけですね。
江口 47都道府県の枠内では、県を越えて工場などを展開していくのはなかなか難しいというか、やりにくいでしょう。30~40年前の企業規模であれば、ひとつの県で対応できましたが、福岡から佐賀や宮崎にでていきたいと思っても、県境を越えることで企業イメージが変わってくるし、手続きも違ってきます。
たとえば企業において、「福岡にあります」というのと「佐賀にあります」というのでは、ずいぶんイメージが変わってくるわけです。関東も同じで、川ひとつはさんで東京と埼玉では地価が倍近く違いますし、住むところひとつでイメージも変わります。行動に制約がかかり、自由な生産活動というか産業活動というか、経済活動がしにくいという状況になっているわけです。
【大根田康介】
【地域主権型道州制国民協議会】
PHP総合研究所・代表取締役社長の江口克彦氏を会長として、東京・新宿区で2009年1月26日に設立された。「増税をしない国家運営」「地域の産官学住による経済活性化」「地域住民秀建による元気な社会」を実現することが目的。国民の間でも地域主権型道州制の実現への機運が高まり、現在は全国56支部、3,000人の会員を擁する。年内には会員が1万人規模になる見込みで、さらなる発展を目指している。
<同協議会ホームページ>
http://www.dousyusei.jp/
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