地域主権型道州制に向けて 九州の若い力に期待
行政単位拡大は国際的に
―海外、とくにアメリカや中国の地域主権型道州制に対する反応はどうでしょうか。
江口 どちらも大賛成でしょうね。それは日本の強力な中央集権体制が、昭和13年の国家総動員法で強化された軍国主義的なものだからです。東京だけを相手にしなければどうにもならないという状態より、この問題については九州、あの問題については東北州といったように個別に交渉できることを中国もアメリカも望んでいると思います。
オーストラリアも州首相がいて、韓国も今後は5つの道州と2つの特別州に分けようとしています。国際的に国家が行政単位を大きくしようとしている最中なのです。
中央集権体制というのは、極端に言えば北朝鮮と日本だけ(笑)という状況のなかで、アメリカも中国もやりづらいでしょう。道州制にすれば、諸外国も日本の各道州と多角的に付き合いやすくなると思います。
―FTAも個々の州で対応可能ということですね。ところで廃県置藩という構想についてはどう思いますか。
江口 廃県置藩とはつまり、広域行政を司る12の道州という枠組みがないままに、300の基礎自治体だけで霞ヶ関に対峙するということでしょう。そうすると、1つの自治体で人口規模は平均約40万人になります。その規模の自治体では、国家権力を持った霞ヶ関とはとても対等に渡り合うことができません。
現在、47都道府県で98の空港があり、平均するとすべての県がひとつは空港をもっていることになります。バカバカしい想像かもしれませんが、たとえば美術館や国際会議場などをひとつは置かないと基礎自治体としてのメンツが立たないということになると、距離的にすぐ近くにできてしまい、両方とも赤字なるようなものすごく非効率的なことが起こります。
また、300の基礎自治体では都道府県の8倍の数になり、港や川、水や道路の問題で効率的な行政が行なわれなくなる可能性が高い。すると結局は、中央官僚がいまよりもさらに強力に全国一律にやらざるを得ない状況になると思います。
とにかく私は一律主義というのが嫌いです。人間というのは一人ひとり違う個性で生まれてきているものを、すべて同じ教育をするのは良くないと思います。それぞれが人間的能力を、それぞれなりに発揮していくことが大切です。地域でも同じことです。
【大根田康介】
【地域主権型道州制国民協議会】
PHP総合研究所・代表取締役社長の江口克彦氏を会長として、東京・新宿区で2009年1月26日に設立された。「増税をしない国家運営」「地域の産官学住による経済活性化」「地域住民秀建による元気な社会」を実現することが目的。国民の間でも地域主権型道州制の実現への機運が高まり、現在は全国56支部、3,000人の会員を擁する。年内には会員が1万人規模になる見込みで、さらなる発展を目指している。
<同協議会ホームページ>
http://www.dousyusei.jp/
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