地域主権型道州制に向けて 九州の若い力に期待
ほど遠い観光立国・九州
―ほかに経済活動におけるメリットはありますか。
江口 あと、ロジスティック(運送手段)の問題があります。トラックで各地に運送ということになれば、県のなかで往来するのは逆に非効率的です。福岡の企業は、佐賀や宮崎にもっと工場をつくりたいと考えているわけです。そうすれば、よりダイナミックな動きができるし、法人税もそれぞれの州で決めることで外資を呼びやすくなり、いろいろコラボレートできます。
現在はトヨタの工場がアメリカに進出していますが、逆にクライスラーが九州にくることはないわけです。道州制になれば、そういう国際的な企業交流、外資参入がもっと盛んに、ダイナミックにできると思います。
いまの日本は、企業にとって4畳半ばかりの家のようなもので、使い勝手が悪くなってきています。それでは住みにくいため、16畳とか20畳のリビングルームがいるわけです。
お店なんかも、どうしても福岡で固まります。辛子明太子は九州のどこに行っても売っているわけではなく、稚加栄や椒房庵など福岡にしか売ってないようなものが、九州のものになれば売上もさらに伸びると思います。道州制とは、そのためにあるのです。
―それは九州だけの問題でないということですね。
江口 たとえ関西で大きな観光ルートを作ろうとしても、県で細切れになって、県府ごとに考えが違いますからうまくいきません。これは水問題なども同じです。
九州の観光政策ひとつとってみても、たとえば大分県だけでがんばったところでスポット的なビジットジャパンになってしまい、せいぜい2泊程度で帰ってしまいます。それならば、九州を一周できるような観光ルートをつくって長く滞在する機会をつくったほうがよい。
県と県の違いというか、県境で考え方に違いが生じてなかなか効果的な政策を実行できない状況を解決しないかぎり、グローバル化のなかで九州どころか日本が生き残ること自体が難しいと思います。
九州に道路がなぜできないのか、無駄な飛行場がなぜ多いのかを考えてみると、やはり九州が7つの県に分かれているからだと思います。九州全体で大きな開発ができず、各県にひとつずつ空港がなければメンツが立たないという県民や知事の意識があるからでしょう。そういう理由で空港がつくられているから無駄な税金が必要だし、維持費で苦労しています。
九州内で成り立っている空港と言えば、せいぜい福岡空港くらいしかないと思います。
【大根田康介】
【地域主権型道州制国民協議会】
PHP総合研究所・代表取締役社長の江口克彦氏を会長として、東京・新宿区で2009年1月26日に設立された。「増税をしない国家運営」「地域の産官学住による経済活性化」「地域住民秀建による元気な社会」を実現することが目的。国民の間でも地域主権型道州制の実現への機運が高まり、現在は全国56支部、3,000人の会員を擁する。年内には会員が1万人規模になる見込みで、さらなる発展を目指している。
<同協議会ホームページ>
http://www.dousyusei.jp/
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