＜本質を汲んで批判してください＞
　このシリーズ（１）で、「中川親子二代とも精神的に脆かった」と記述した。この表現を逆手にとって「筆者は死者に鞭を打っている」という、メールでのご批判を受けた。表向きのごもっともなご指摘ではあるが、このシリーズをすべて読破されて、その後にお叱りをいただきたかった。
　中川親子は政治家である。平凡な人たちではないのですぞ！！２人とも国家首相の野心に燃えていた偉人たちだ。「派閥戦争に負けたり（先代）、選挙に負けたり（二代目）という一頓挫した状況に対して、失意のどん底に陥る。そして精神的完敗を被るようでは、一国のリーダーとなるにはあまりにも脆い」という強調をしたかった。「早とちりするな」と反論したい。アーム・レポの田中社長の「地獄からの生還」を読まれてどう感じられたか！！同氏は死なずに歯を食いしばって生還の目途をつけた。まだ前途には、大きな厚い壁が立ち塞がっている。起業再生をはかるため、田中社長にはさらに一層の奮闘が望まれるのだ。同氏を含めた中小企業の経営者は、ギブ・アップを許されない。必死で企業防衛に注力すれば、精神的には疲労困憊になるが、翌朝はまたファイティングポーズをとることが宿命づけられている。おそらく、中川親子が田中社長と同様の環境に追い込まれていたら、戦線逃亡をしていたに違いない。脆いからだ。

＜逃げ隠れしない戦いには、強力な助っ人が現れる＞
　田中社長の人柄・どん底の闘いを目撃し感銘を受けた社員たちは、浮足立たずに会社に忠誠をつくしてきたことは、前回述べた。加えること、買主のやずやの心変わりを一身に引きとめたＡ氏の存在がある。大成建設とアーム・レポとの間における、処理を巡る時間の浪費に痺れを切らして、買主が「もう諦めた」と交渉をストップする危険な時期があった。このＡ氏が、買主の気持ちを和ませる役割を１年近く担ってきた。
　経営する以上、綺麗ごとではすまされない。企業存続するには資金繰りが苦しかろうとも、表面上、支障なく回すことが宿命づけられている。繰り回しを投げ出したら、会社はそこで終わりである。
アーム・レポも水面下での金繰りは火の車であった。「逃げ隠れしない」とか「面子を保つ」という綺麗な言葉で語れる次元ではない。資金破綻を表面化させないために、個人資産、家族の貯金もすべて注ぎ込んだ。
　この惨状を見かねたある家主が、愛の手を差しのべた。アーム・レポの関連会社が管理している家主さんだ。「田中さん！！うちの預かり家賃を当分、貸してやろう」と、支援の行動に乗りだしたようだ。田中社長にしてみれば、この家主さんには今後、100年間恩返しし続けても尽きることはなかろう。奇特というか、懐深い家主さんと同様に、たくさんの分限者（金持ち）が資金的なサポートを行なってくれたのである。だからこそ、地獄から生還できたのだ。
　この１年半、世間の目を意識した田中社長は、好きな中洲通いをやめて薬院・大名界隈で食事をすることにした。ゴルフも、平日プレーを放棄して日曜ゴルフに徹した。周囲を意識して福岡近郊のゴルフ場を敬遠し、田舎回りのプレーをしてきた。業界の集まりでも、常に努めて元気印を押し通した。メールで「死人に鞭打つ」と批判した方々は、経営の現状をどれだけ理解しているかは不明だ。だが、「地獄の瀬戸際」に追い込まれても、中小企業の逸材の経営者は、逃げ隠れずに脱出しようと試みをしているという現実を知っていただきたい。

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