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山水建設への遺書(28) 利権の享受―その6/野口孫子 氏
経済小説
2009年10月 9日 07:00

利権の享受6

 山水建設には、閉塞感が漂っているように思える。現状を変えたい、打破したい、と思っても、坂本という大きな壁が立ちはだかっている。

 坂本は「自分がいないと、この会社は持たない」、「自分は特別だ」と思っている。
 しかし、坂本が社長になって10年、大きなスパンでみると売上は伸びているものの、他社はそれ以上に伸ばしている。相対的に、業界での地位は下落しているのだ。主力の戸建・集合住宅事業ではすでにNo.1の座を奪われ、辛うじて不動産部門で体面を保っているに過ぎない。創業社長の築いた人的資産・精神的資産を食いつないで、やっとここまで持続させてきたが、もはや人心は坂本から離れつつある。
 近年、落日の兆しを覆うべきことはできない。

 ドイツの思想家シュペングラーは、1918年の著書「西洋の没落」で絶対的に正しい思想・体制はないと言っている。あの大国アメリカも、金融危機を経て一国で世界を支配する考えを改め、世界と協調することにチェンジしている。右肩上がりの長い好況で二度と世界恐慌はないと高をくくっていたのが、たった1企業のリーマンの破綻によって世界恐慌に近い大騒動になった。
 シュペングラーの言った通り、この世に絶対はないのである。

 「自分が絶対」と思った時から、坂本には傲慢さが宿ってしまったのである。取り巻きも「あなたのような人がいないと、この会社は持ちませんよ」とゴマをする。この変化の激しい不確実な時代に、過去の成功体験は役に立たないことを思い知るべきである。
 長い間、権力の座に座っていると、愚かにも甘い汁を吸って利権にまみれ、組織は否応なく腐っていくものである。自分は立派だと思っていても、まわりから甘い汁を吸わされ、麻薬と同じようにいつの間にか「もっと甘いもの」をと要求するようになるのが、人間なのだ。

 坂本よ!
 奢るなかれ!

 正義感のある若い人よ!
 あなたたちが主力にならなければ、山水建設は変わっていくことはないだろう。

~つづく~

(これはフィクションであり、事実に基づいたものではありません)


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