食糧事情(1)
先日とある方から、「連載も長くなるけど、食事についてのエピソードがないですよね」という指摘を受けた。そういえば食事については、ほとんど話していなかった。観光名所がなく、娯楽もないニジェール。息抜きといえば、日本人が集まっておいしい日本食を食べるということぐらいしかなかった。やはり、日本人が作る日本食が世界で一番おいしいと思う。私個人的にはニジェール食はあまり口に合わなかったことが、ついつい先送りになった理由かもしれない。
ニジェールの一般的な食事はヒエである。ヒエと聞いてピンと来る人はいるだろうか。昔はよく食べられていたようだが、昭和期に入って米が普及すると次第に食べられなくなった。現在は鳥のえさなどの飼育用で使われている。
このヒエを日本でいうウスとキネのようなもので叩いて脱穀し、粉状にする。沸騰したお湯に入れると固まり、もちのような状態になる。それにバオバブの葉とオクラで作られたソースをかけて完成。名前は「クルバクルバ」といい、手づかみで食べる。写真にあるようにあまりおいしそうには見えない。匂いもきつく、さらに食欲を減退させる。これが日常食である。ちなみに、どこの村に行っても女性はこのウスとキネを使って食事の準備をしている。朝からもちをつくような木の音がするのが、ニジェールではごく当たり前の光景である。
村人に聞くと、「自分たちが毎日食べているのは鳥のえさだろ。ニジェールは貧しいからな」と答えた。自分たちの主食が、鳥のえさと同じものという認識はあるらしい。常に穀物しか食べていないので、タンパク源がなく栄養価に偏りが生じるように思うのだが、なぜかニジェール人の若者は筋肉隆々だし健康そうである。ヒエの栄養価は案外高いのかもしれない。
だからといって、「年がら年中クルバクルバを食べているわけではないだろう」とみなさん思われるかもしれない。しかし、これがまた驚いたことに年がら年中クルバクルバである。毎日飽きずに食べている。南米のコロンビアに行った私の友人に聞いたところ、コロンビアでも食生活は常に同じものを食べているという。アジア諸国も似たようなものらしい。「今日はラーメン、明日は焼き魚定食、その次の日はトンカツとバリエーション豊かな食生活をしているのは日本人ぐらいじゃないか」と友人は語る。
【廣瀬】
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