<大手に刃向かえ!!>
筆者に会社経営の姿勢を明示してくれた師匠の一人が、ソロンコーポレーション(本社・福岡市中央区)のオーナーである田原学氏である。同氏は、現在闘病中であり、会社も清算方向に進んでいる。このことは、あとのシリーズで詳細に触れる。ここで記述すべきことを述べる。会社を起こして3カ月経過した頃、田原氏と経営談義を行なった際のことだ。
「児玉君!! 中小企業を苛めたら駄目だぞ!! 大企業の不当性を問いただしなさい」と助言された。「はい!! お教えの通り、大手を問いただしていきます」と明言した。この教えに従って15年間、情報発信の基本的な立場を堅持してきたつもりだ。
福岡を元気にしてくれた功労者の1人に、高塚猛氏がいる。同氏は、フロント側から福岡ダイエーホークスを常勝軍団に仕立て、福岡市民に熱気を授ける「プロデュース」を行なってくれた。ダイエーが経営権を放棄して、コロニー・キャピタルが買収した。新体制を築くには、高塚氏の存在が目障りだ。侵略者が描いた『セクハラシナリオ』による追放劇に、地元の経済人、マスコミが、単純に乗せられた。福岡にとっての恩人・高塚氏を、犯罪者として抹殺するプロジェクトに加担してしまったのである。
弊社は、この高塚氏を擁護する論陣を張った。追放策謀劇の本質の暴露キャンペーンを行なった存在は、一部の良識記者を含めて、稀有であったのだ。
<中小企業の経営者には、エコひいきもする>
弊社は仕事柄、『IB』誌の「SIC」のコーナーで、事前情報を流す。会員のリスクヘッジ(不良債権の防止)のために処置を講じるのだ。だが、無暗に「危ない、危ない」と中小企業のことを書き殴るようなことはしない。「この経営者なら、ピンチから必ず脱出できるはずだ」と判断すれば、じっくりと動向を注視して情報を貯めることもたまにはある。貯める判断基準は、『経営者の逃げ隠れしない姿勢と、経営者の器量の2点』に尽きる。
昔、昭和維新のクーデーターに走った若き陸軍将校に対して、当時の内閣総理大臣・犬養毅氏は「話せばわかる」と対話を勧めた。しかし、若手将校から、「問答無用」と罵倒されて撃たれたことは有名な史実だ。
経営者たる者、常に何事も話し合いの席に座れば、相手を説得できるかどうかの力が問われる。我々も人の子である。取材の過程で相手のことが理解できるようになれば、その気持ちが伝わり、情もうつってくる。「この経営者のために、一肌脱ごう」という気持ちになってくるものだ。こういう気分にさせるのが、人間の器量力、というものであろう。
ところが二代目、三代目は、こういう応対を避ける傾向が顕著である。相手を言い負かせる自信もないから、逃避するのであろう。取材する側からみれば、「ノーコメントとは何事か!!」、「取材を拒否するとは許せない」と、感情が露わになる。そこで、取材側からとことん追い込みをかけられる。人生の鍛錬不足の二代目、三代目は、向かい合って他人を味方につけることなど想像できないことなのだ。だから、瀬戸際で粘れない。
その点、27歳の若さで独立したアーム・レポの田中社長は、苦労に苦労を重ねて人生の機微を噛み分けている。相手の懐に入り、自分の経営感を語って支援者を増やしてきた。だから22年間、経営を持続できたのだ。
逃げ隠れせず、相手に対する対話力、説得力が、「オー、こいつ、見ごたえがある奴」と印象づけていく。この、味方を増やしていくパワーこそが、地獄から生還させてくれるのだ。
(つづく)
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