食糧事情(2)
首都に行けば、露店で食事をすることができる。トマトベースのソースにオクラを合わせたものをご飯にかけた通称「ぶっかけ」なるものが売られており、値段が比較的安価なこともあって、首都に行った時はよくそれを食べていた。そういえば、仲の良くなったニジェール人に日本食を作るという機会がよくあったのだが、天ぷらやハンバーグなどはあまり好まれなかった。しかし、日本のカレーは比較的この「ぶっかけ」に比較的似ており、喜んで食べてくれたものだ。
オクラが入ると、例のネバネバした成分からソースが少しどろりとする。これがニジェールの一般的なソースである。収穫されたオクラを細かく切り、それを乾燥させて保存食にするのである。以前、友人のニジェール人がニエベ豆というソラマメのような野菜を塩もかけずに茹でたまま食べていたのを思い出し、茹でたオクラも食べるだろう、と思ってオクラを茹でて持っていったことがある。ところがまったく口にしようとしない。友人の夫人にいたってはすごい形相、というか「こんなもの、食べられないわ」といった顔をしてこっちを睨んでいる。3歳になる友人の子どもはよくわからないけど、目の前に食物があるといった感じでオクラを食べていたのだが。友人は笑いながら、「ニジェール人はこれは食べない」と言った。茹でたソラマメとオクラの何が違うのだろうとは思うのだが、生まれてこのかた「オクラは乾燥させるもの」、という固定観念でもあるのだろう。
私は、村に長期滞在する場合は、さすがにクルバクルバだけだと飽きてしまうので、スパゲティを買って来て、それを料理してくれと頼んでいた。スパゲティはあちこちで売っているので、比較的簡単に手に入れることができる。
ニジェールのスパゲティの作り方は独特である。日本だと、そのまま茹でてアルデンテ状にしてから、ソースをかけるのが普通である。しかし、ニジェール式だとまずスパゲティを半分に折って鍋に入れ、トマトペーストの缶詰や切ったタマネギ、最近取れる作物や肉を入れる。それから小1時間ほど煮込むのである。スパゲティはスプーンですくえるぐらいのびており、まったく歯ごたえはないが、トマトソースをしっかり吸いこんでいる。炊き込みご飯のスパゲティ版とでも言おうか。ニジェールでは、スパゲティは「茹でる」というより「煮込む」もののようだ。ちなみにこれはごちそうの類である。スパゲティは高価なため、たまにしか口にすることができない。
~つづく~
【廣瀬】
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