◎中食がこうも拡大する理由
フードマーケットにおいて中食が拡大している背景には、大きく分けて以下の4つのような理由がある。
ひとつは女性の社会進出やDINKS(夫婦二人暮らし)、単身者世帯など小規模世帯の増加、そして少子高齢化といった社会情勢の大きな変化があげられる。
二つ目は家事の省力・外部化ニーズの増大、個食化、共働き夫婦における家事分担などライフスタイルの変化。三つ目は健康志向、食品への安全性の追求、本物志向、多品目の摂取やバランスのとれた食事など食に対する消費者の意識変化だ。
そして、最後に電子レンジ等の普及、加工食品の向上、お袋の味の伝承停止といった調理環境の変化がある。
昭和50年代までは、母親が買ってきた食材を家で調理して家族で食べる内食、外出時に専門のレストランで食べる外食と、単純に定義することができた。
しかし、今日ではコンビニはもちろん、スーパー、百貨店までもが弁当や総菜を販売するのは当たり前。加えて持ち帰り弁当や移動販売が浸透したため、飲食店までもが昼食時には店頭に弁当を置いたり、オフィス街などに自ら販売に出かけたりしている。
内食、外食のどちらでもない中食が内外両方の市場を侵食するかたちで、フードマーケットを拡大しているという構造だ。
◎中食参入の背景に荒利益の高さもある
中食関連の市場規模はすでに6兆円を超えているが、それらは弁当や総菜の伸びといった単純なものではない。
和洋中などの専門料理から健康・ヘルシー&高齢者向け、老舗総菜店や有名料理人による高級グルメ、そして200円台弁当や105円総菜といった低価格品まで、多様な業種・業態が参入しており、市場はいろんな方向に拡大していくといえる。
当然、今後は業種業態が入り乱れた大競争時代に突入していくはずだが、それでも各社が中食参入の手を緩めないのは、その利益率の高さにある。
例えば、埼玉県に本社をもち、関東1都5県に100店舗を展開する食品スーパーの「ヤオコー」。同社の強さはまさにデリカと呼ばれる総菜・弁当にある。この荒利益は年々高まり、現在は47%超。売上げ構成比も2005年には青果の12.8%を上回る12.9%となり、09年決算では14%に迫る勢いである。
同様にコンビニではセブンイレブンが構成比36.8%、ローソンが26.5%と総じて高い。 コンビニでも総菜の荒利益率は50%前後というから力を入れるのは当然のことだ。
またジャスコの親会社イオンが06年に総菜・弁当のオリジン東秀を傘下に収めたは、総菜の売上げ比率を高めるためで、「デリカ事業改革チーム」を設け、総菜構成比を現在の10%程度から15%に引き上げる目標を設定している。
【剱 英雄】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら