福岡県南部の大牟田、八女、筑後、柳川、みやま各市の5人の市長が21日に上京、地元選出国会議員に陳情を行なう。
前述の5市は、衆院福岡7区に編入されている。今年8月の総選挙においては、5人の市長が揃って自民党の古賀誠氏を支援し、同氏の当選に寄与した。小選挙区では古賀氏に惜敗したものの、対立候補だった民主党・野田国義氏が比例区で復活当選。ひとつの選挙区に2人の衆院議員が誕生した形となった。民主党が歴史的大勝を果たし政権交代が実現したことを受け、自民一辺倒だった5人の市長が方針を転換。民主、自民の両党議員に陳情を行なうことになったという。
大牟田市長らは、野田氏が当選した直後に面会したことはあるものの、5人の市長がそろって野田議員に面会、陳情するのは初めてのこととなる。
注目される陳情の内容は、道路や三池港の整備、さらには有明海沿岸道路の佐賀空港への延伸や、同道路と九州自動車道みやま柳川インターチェンジを結ぶ国道443号バイパスの早期完成など、関係市の公共事業継続が中心となる模様だ。
福岡7区は、八女市の「朧大橋」や「有明海沿岸道路」に古賀氏の名前が冠され、それぞれ「誠橋」「誠道路」などと揶揄されてきた。古賀氏が公共事業を主導してきた証しでもある。当然、地元の建設業者は、大手ゼネコンの下で薄利に泣かされながらも、工事を引っ張ってくる古賀氏を支援して来た。しかし、公共事業削減の流れの中で、古賀氏への忠誠心は薄れてきたとも言われている。地元では「公共事業を持って来たのは古賀氏の力ではない。たまたま古賀氏が政権与党にいたからできたこと」と冷ややかな見方をする向きもある。自民党政権下で長年築かれてきた「政・官・業」のトライアングルが、崩壊局面に差しかかったということだろう。
ところで、5人の市長が揃って陳情するという内容は、いずれも自民党政権時に策定されていたものだ。民主党政権になって予算の見直しが進む中、継続事業まで中止されるのではないかと、各市長は気が気ではあるまい。一方、陳情を受ける側となった民主党にとっても課題は多い。地域住民からの声や要望をいかに吸い上げ、施策に反映させるのかが問われようとしている。しかも、自民党とは異なる政治手法が求められているのだ。八女市長16年の実績をもつ野田氏の手腕の見せどころでもある。陳情を受けるのかどうかも注目したい。
それにしても、近頃よく耳にするのは「古賀誠氏の神通力はなくなった、存在感がない」との声。自民党が野党に転落した以上、古賀氏の力が低下するのは自明の理。5人の市長が宗旨替えするのはやむを得ないことかもしれない。
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