この「シリーズ」での鉄則は、まず地獄の淵に行かないことだ。理念経験から死に物狂いで挑戦していれば、地獄には直面しない。健康住宅のことをレポートしてみよう!!
<時代を先取りした「健康」>
平成10年に「健康」を売り物にした「健康住宅(株)」が設立された。当時、畑中直社長に対して「名前の通り、素直に理想ばかりが先行した住宅が売れるはずがない」と批判したことがある。まず第一に、「社会的使命=理念」を「健康住宅」と会社商号として使用した先駆性を理解できなかった。時代の先読みができない当方にとって、「理念を売り物にして商売ができるなどと夢想する戯け者」という批判しかできなかったのだ。福岡において、「社会的役割」をその社名に謳ったのは、同社が最初のケースではなかったか!!
畑中社長は他人の論評には「われ関せず」と「健康住宅」の商品開発に没頭していった。「健康住宅とは、一定の生活環境を提供することである」として「年中、一定の温度、湿度を保つためにはどうするのか」を追求していった。結果として『外断熱の家』を自社開発するに至った。健康住宅は当然、省エネ住宅にたどり着く。この5年で、畑中社長が提唱する「健康住宅」にようやく時代が追いついた。当然、業績が進展しはじめた。
<経営者の理念で勝負できる住宅業界>
あらためて住宅業界を見つめると、『経営者の価値観、理念の優劣で業績が明確になる』法則の存在を発見した。タマホームのように全国展開を志すことなく、地域のホームビルダー(年間100棟規模)に徹する経営規模の成功の秘訣は「経営者の住宅理念をどれだけ具体的に落とし込むか」にかかってくる。同社を起こす前から、畑中社長は自らあらゆる住宅セミナーに参加してきた。そこから独自の『外断熱の家』=「健康住宅」を具体的に世に送り出した。形にするまでには、20年の「涙と苦労」の結晶化が必要であった。住宅の経営者は「生活スタイルを極める」伝道者でなければ務まらない。
伝道者は、理念を説くだけで信奉者が増えるわけではない。具体的に形に落としこむ闘いを繰り返すことが強いられる。まず社員たち一人ひとりを、また、協力業者を信奉者に仕上げないと前進できない。同社の前身は「まるは住宅」という建売会社である。社員・取引業者は、「建売業者」時代の意識・行動手法に染まっている。この沈殿した旧態依然の作風を一掃することは、革命事業と同様の「難業」である。
難業を完遂するには、顧客の支持を取り付けることが早道だ。同社の客層は、知的高所得者層である(弁護士、医者、教職員)。これらの客が客を呼んでくれる現実を目の当たりにして社員、取引業者は、ここで初めて「青臭い畑中社長の経営は正しいのだ」と熱烈な信者に様変わりしてくれるのだ。こうなると強力なスクラムが形成され、強固な勝利の方程式が構築される。飛躍の波に乗れない人々は去っていく。去る者は追わず、が鉄則だ。
健康住宅の成功体験は、まさしく『理念と算盤』の両立の見本だ。地域密着の市場をターゲットにしたホームビルダーの必勝法則は、まず経営者自身が独自の住宅理念を有しているかどうかである。時流にマッチしていなければ成功しない。経営者は「住宅理念の具現化」に愚直なまでに没頭していくことが宿命づけられている。「こんな健康住宅を創ります。関心のある方々はこの指とーまれ」と旗印を打ち建てる。この旗印に賛同する層が現れたらしめたものだ。
畑中社長、曰く。「万民に共鳴することを求めていては、事業の成立はあり得ない。特定の、限られた層が弊社の住宅に賛同してくださればそれで結構。年間、100棟の受注があればそれで充分だ。弊社のお客さまは、活字が好きな方々だ。私には、弊社のお客さまの顔つきが浮かぶようになってきた。有難いことだ」。
COMPANY INFORMATION(会社概要)
健康住宅株式会社
代 表:畑中 直
所在地:福岡市城南区別府5丁目25番21号
設 立:1998年8月
資本金:2,000万円
従業員:49名
売 上:23億円(09/7)
(つづく)
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