◎期待大の中食ビジネス市場
中食はフードビジネスにおいて伸びしろのある市場と期待される。まず、消費者は中食がもはや便利さだけでなく、食事の楽しさや経済性までも享受できる、日常生活に不可欠なものと見なしているからだ。
また、日本人の食習慣として和洋中のすべてが定着し、それが混在したメニューを求める傾向が強いこと。こうしたニーズに対応できるのは外食や内食では限界で、中食がそれらを埋めていくことになる。
さらに食材や生産現場といった食の周辺環境に対する意識が変わってきたことも大きい。
外食ではこれらについては、これまで企業の性善説のもとに行われてきた。消費者も「○○企業が運営しているレストランだから安心」と信じて疑わなかった。
しかし、相次ぐ食品偽装や安全性の欠如は、消費者を疑心暗鬼にさせ、食材の出所や調理方法の公開は大前提になった。
すでに食材のルートや生産現場に対する消費者の関心は、非常に高い。 道の駅が多くのお客を集めるのは、商品の流通過程が単純で、生産者の顔が見えるからである。
つくり立ての弁当や総菜、あるいは地産地消をうたうメニューの人気が高いのも、単においしいだけでなく、調理作業がよく見える店内厨房で作られていることがある。中食が安心・安全を求める消費者に支持され、そのまま信頼を得ていることは、新たなビジネスモデルを創造するチャンスといえる。
◎好調中食ビジネスが新たな市場を切り拓く
ここに来て低迷する外食企業が中食に乗り出し始めている。すかいらーくは「これからは中食にどんどん参入していく」と表明する一方、2006年には宅配寿司の小僧寿しをTOBで子会社化。これは伸びる中食をどんどん取り込んでいこうとことで、今後は大手同業でも同じ動きが活発化すると見られる。
すでに中食分野で確固とした地位を築いているのが、神戸コロッケのロック・フィールドと、高級総菜店を展開する柿安本店。ともにデパ地下への展開で急成長し、ロック・フィールドは2008年の売上げが460億円で前年比5.6%増、柿安本店は同195億円で同11.3%増と、不景気をもろともせず快進撃を続ける。
中食の成長は異業種に与える影響も少なくない。百貨店はもちろん、JRはエキナカ(駅中の売店)で、中食業態を充実させている。
2011年に開業する新博多駅も利用客のみならず新たなお客を呼び込むには、中食テナントの誘致がカギを握るのは言うまでもない。
都市部の再開発事業もそうだ。東京ミッドタウンはホテルのザ・リッツ・カールトン東京やサントリー美術館などが有名だが、ショッピングゾーンには和洋中の総菜店が入居し、昼食時には手頃な価格で弁当も販売。ファッションテナントが閑散とする一方で、総菜店は多くのお客を集めている。
福岡でも消費者の高級ファッション離れ、価格デフレはすっかり定着した。こうした中、商業ビルでは中食テナントが集客の核になるのは間違いなさそうだ。
【剱 英雄】
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