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「天声人語」と新聞の未来
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2009年10月19日 10:13

 18日の朝日新聞「天声人語」を読んだ。同欄筆者の「新聞」に対する思いを感じたが、同時に報道のあり方や新聞の未来について考えさせられた。

 過日、親しい全国紙の記者と酒を酌み交わした。彼は言う。「先ずは記事をネットに上げろとうるさく言ってくる。これでは、うちの新聞を読むため、お金を払っている人たちに申し訳ない。インクの匂いが読者に届く前に、ネット上で同じ記事を公開することは自殺行為だ」。
 確かに、ネット社会の到来とともに「配信」の形が変わってきた。新聞をとらなくても各社の記事をネット上で見ることができる。高い購読料を払わなくても、インターネットの環境さえあれば各社の記事が読めるのだ。しかも、紙面が届くより早い時間に、である。本当にこれでいいのだろうか。
 ネット上で公開される記事は、そのほとんどが横書きである。新聞上の扱いの大きさとは関係なく、まさに「横並び一線の文章」と化す。紙面では、見出しの大きさなどで記事の重要性を理解することが可能だが、ネット記事ではそれができない。記者の思い入れなど微妙なニュアンスも伝わってこない。新聞には、「紙面」や「縦書き」でなければ伝わらないものが確実に存在する。それを捨ててしまったら新聞の意義が失われるのではないか。

 昨年から今年にかけて「秋田魁新報」「南日本新聞」「琉球日報」「沖縄タイムス」などの地方紙が相次いで夕刊廃止に踏み切った。さらに、「毎日新聞」の北海道での夕刊廃止、「西日本新聞」の山口支局・山口県版廃止など縮小が続く。もともと朝・夕刊セットだった新聞購読のスタイルも、時代とともに変わってきた。朝刊だけは読むが、夕刊を断る世帯が増えているのが現実である。広告収入の減少や活字離れが原因と言われているが、新聞の発行部数が減り続けているとの指摘は間違いではない。しかし、新聞文化を廃れさせてしまってはいけない。報道は、真相に至る過程や、記事の持つ社会的意義を伝えるという使命を有しているはずだ。スピードだけが優先されては決してならない。新聞はその使命をもっとも体現できるメディアであり続けてほしい。

 朝日新聞18日付朝刊の「天声人語」は、静かにではあるがそれを伝えようとしたのかもしれない。「縦書き」をこよなく愛する読者は少なくないと信じたい。

 最後に、同日の「天声人語」の結びの部分を紹介しておきたい。「横書き」になって申し訳ないが・・・。
 「新聞社はネットでも発信しているが、そこで再会するわが文は心なしか『誠意』を割り引かれている。特にコラムの場合、体裁の違いはそれほど大きい。どうか小欄は、ぬくもりを添えてお届けする『縦書き』でお読み下さい」。

【頭山 隆】

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