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山水建設への遺書(34) 抜本的改革―その6/野口孫子 氏
経済小説
2009年10月20日 08:00

抜本的改革6

 経営陣は業績が思うように回復しないことに、打つ手が見当たらないのが実情だろう。
しかし、凋落の兆しは何も今に始まったことではなく、坂本が社長に昇格して一年もたたないうちからすでに表れていた。

 名古屋人脈を中心とした恣意的な幹部の登用に、社員は白けてしまった。田舎の営業本部長時代にやりたい放題できたから、坂本は社長になっても同じことができると錯覚したのだろう。自分に反対した幹部やその部下を、徹底的に左遷、排除していった。創業社長山田の築きあげた「家族的情愛」のある会社が、その伝統の影もなくなり、ゴマすりの取り巻きによる情実人事が横行するようになっていった。
 社員が疑心暗鬼になるのは当然である。
 就任1、2年の頃は、「何かまとまりがなく、元気がないなあ」という兆候は出ていたものの、まだ山田の作った洗練された士気の高い社員の気風が残っていたので、明らかに数字としては悪くなったというまでには表れていなかった。しかし、それも4、5年が過ぎる頃になると、明らかに数字に表れ始めていた。
 後発ながら、30年にわたって業界1位の座にいたのが、2位に転落したのはこの頃であった。また、当時の中井会長が責任を感じ、会長職を辞したのもこの頃である。
 しかし、坂本自らは責任をとるつもりは全くなく、その後もあの手この手を使い依然として社長、会長CEOとなって君臨している。「抜本的改革をしなければならぬ」と命令している張本人自身が、自らの構造改革した方が会社としての成果が上がると思われるのだが…。

 山水建設の不調の原因は、社会の経済情勢のせいだけではない。その原因が坂本にあることは、10年の長いスパンで同業他社との比較をすれば一目瞭然である。
 他社は同じ不況下でも、新商品開発などによって営業力強化を図っている。山水建設に追いつき追い越せの気迫で、不況による落ち込みを少なくしているのだ。なかには、逆に業績を伸ばしている会社まであるのである。

~つづく~

(これはフィクションであり、事実に基づいたものではありません)


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