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山水建設への遺書(35) 抜本的改革―その7/野口孫子 氏
経済小説
2009年10月22日 08:00

抜本的改革7

 どんな会社でも、対策を怠るとつぶれるものだ。そして、つぶれた場合の結果責任は、当然ながら最高経営責任者が、と思うものである。それが日本でいう社長の責任であり、最高経営責任者の役割として心して置かねばならないことだろう。

 しかし、独裁者坂本は、業績が悪くなっても斎藤社長COOに責任を取らせればことが済む、とでも思っているようだ。社長COOを挿げ替えればそれでいい、というような甘い考えを持っていたとしたら、大きな間違いである。坂本会長CEOは威張り散らし、何でも出来ると錯覚していないだろうか。
 CEO会長にどんな理由があろうと、責任から逃れることは出来ないと認識すべきだろう。山水建設では、社長COOの任命権は会長CEOが持っている。故に、会長が責任から逃れることは出来ない。業績が悪いことを株主への言い訳にし、人身御供のように斎藤社長を辞任させて自分は生き残ろうとする、そんな姑息な手段は許されない。

 どの経営者も、「成長をさせるために」「強い会社にするために」社長になったと思いがちだが、いかに会社をつぶさないか、をまず考えるべきである。
 サドンデス(突然死)。会社倒産が突然やってくる時代。改革、改革と叫んでいても、法令違反の事例であったように、ある日突然老舗の会社が市場から去っていく。
 これを防ぐには、経営者としてのリスクに対する不断の努力、緊張感が必要なのである。

 坂本は威張る前に、創業社長山田のように社員と一体になり、危機を乗り越えるために社内ムードを盛り上げていかなければならない。そうでなければ、凋落は決して止まることはないだろう。
 幸い、まだ会社や社員は「腐っても鯛」である。社員力や商品力、品質力、アフターサービス力などは、業界一。その秘めたる潜在力を、今一度引き出すことが急務なのである。
 坂本がそのことに早く気づき、悔い改めて自己を改革していくならば、必ず再び栄光の山水建設の時代がやってくることだろう。

~つづく~

(これはフィクションであり、事実に基づいたものではありません)


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