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特別取材

シリーズ・偽装表示で揺れるフグの町・下関(17) ~取材を終えて
特別取材
2009年10月26日 08:00

連続するフグ加工品業界によるJAS法違反の検証

 昨年7月に発覚したエツヒロの産地偽装事件からほぼ1年経った今年6月、日高食品のフグ加工品の賞味期限の不適正表示による「JAS法違反」、「製造年月日を偽装」がマスコミに大々的に報道された。同社商品である「ふくカレー」を食した大阪市の消費者が体調不良を訴えて、保健所へ通報したことが農林水産省の立ち入り調査の直接の原因であった。食品検査の結果、体調不良を起こすような商品はでなかったが、出荷日を製造年月日の起点として賞味期限・消費期限を設定していたフグ加工品業界の商慣習に、農水省がメスを入れるきっかけとなった。
 日高食品によるJAS法違反が報じられてから、下関のフグ加工品業者には動揺が広がったという。理由は出荷日を製造年月日とするのは業界の商慣習であったからだ。
 主力商品がウニの下関水陸物産や鯨のマル幸商事などもフグの加工品を販売している。また同じフグを取り扱っているダイフクはフグの刺身が主力で、フグ加工品の売上は1,000万円程度とみられ、年間売上高6億1,000万円の1.6%しか占めていない。下関水陸物産の嶋田社長は、「20年前から出荷日を製造年月日としていた。古い体質から脱皮てきなかった」と商慣習に流されたことを悔やんでいる。
 下関市では日高食品のJAS法違反後の今年7月、フグ食品関係約100業者集めて、国、県、市の共催で食品表示の緊急講習会を開いているが、その効果は見られなかった。下関保健所によると、フグ加工食品を扱う県内数社の食品表示に疑義があると指摘する通報が8月18日に寄せられ、下関水陸物産などのフグの加工品業者への一斉立ち入り調査となった。 
 一般からの情報提供により立ち入り調査に入ったとなっているが、大半は辞めた元社員からの内部告発の可能性が高いと言われている。今回、JAS法違反の改善命令を受けた企業は、再生を目指して茨の道が続くが、立ち入り調査受けていない企業も、通報や内部告発に神経を尖らしている企業が多いと言われている。
 7月に引き続いて10月14日、食品表示責任者養成講座が、下関市古屋町のリサイクルプラザで開かれ、市内の食品関係業者ら約50人が参加している。山口農政事務所がJAS法や食品衛生法、下関保健所が県条例を説明した。下関市では、10月9日にフグ加工食品の不正表示問題で4社がJAS法に基づいて是正指示を受けたばかりであり、講座の効果が後日問われることになる。
 結論からいえば、水産都市・下関の危機であり、官民挙げて是正することが消費者の信頼を回復する第一歩である。今一度、フグ加工食品を取り扱っている全社へアンケートを配布し、過去にJAS法違反をしていたかどうかを問い、正すべきは正し、下関市のフグ加工食品の安心安全を宣言できる体制を早急に整えることが求められる。
 今回の取材を通じて感じたことは、長年「商慣習」として事実と異なる製造年月日(出荷日)や科学的・合理的な根拠のない賞味期限を表示していたフグの加工食品の問題は、あらゆる製造業者が身近に感じる問題でもある。商品に対するクレームが生じた場合、以前は、消費者から製造業者に問い合わせがありその内容を事前に把握することができた。しかし、最近の消費者は保健所や消費者生活センター等の公的機関へ直接通報することが大半である。他人事ではなく、いつ自分の会社に「災難」が降りかかってくるかわからないことを経営者は、肝に銘じておくことが大切である。消費者の目線に合わせた個々の企業の「危機管理」能力が問われている。

(了)

【特別取材班】


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