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特別取材

自律型ロボットの実用化・産業化は本格的に進むのか?(8)
特別取材
2009年10月27日 08:00

―テムザックの動きを中心とした同時代レポート

《私たち医学の立場からのニーズを汲み上げ、本当に使い易い、高齢者や障害者、患者さんに役立つロボットを、このベーダ国際ロボット開発センターで次から次へと開発したいと思っていますし、それが私たちの責任だと思います》

 本レポートの締めくくりとして、九州大学医学部大学院教授でベーダ国際ロボット開発センター理事長の橋爪誠教授に、医療介護分野の専門家として今後のロボット開発への見通しと期待をインタビューした。

九州大学医学部大学院教授 ベーダ国際ロボット開発センター理事長の橋爪誠教授

 私がロボットに関わり始めたのは、90年代にアメリカで開発された「ダ・ヴィンチ」や「ゼウス」など医療用・手術用ロボットを実際に体験してからです。
日本のロボット技術は世界でもナンバー1だと思うのですが、残念ながら医療分野では後手に回っていて、これからは「Made in Japan」を作っていく必要があると考えていた訳です。
 医療・治療分野では、技術は持っていても、開発や臨床試験、認可に時間がかかって日本国内ではリスクが大きく、投資回収が難しいと思われていたことが、これまでロボットの製品化が遅れた要因だと思います。
 そんな問題意識を持っていたところ、私はこの福岡でテムザックの高本社長と「プレ・ホスピタル・ケアロボット」の開発をいっしょに手掛けることになりました。

駅や空港などパブリックスペースに配備し、九大病院と無線通信でつないで患者の容態を遠隔診断、救急車が到着するまでの緊急治療を可能にするプレホスピタルケアロボット

 高本社長とのお付き合いを通して、福岡出身で早稲田大学の高西先生をはじめ、優れたロボット研究の先生方とも知り合いになり、ロボット技術と医療分野の交流がもっと必要だとお互いに考えるようになったのです。
 そして本年5月、宗像市の旧・玄海町役場跡地にベーダ国際ロボット開発センターが開設され、理事長の責務を拝命した次第です。
日本から世界に発信のできる、本当に役立つ医療や介護のロボットの開発が、このベーダ国際ロボット開発センターの目的・役割です。
 まだ設立したばかりで、本当にどこまで実用化できるロボットが創れるか、この組織が開発にふさわしいシステムなのか、心配な部分はあります。しかし、お陰様で第1号機として発表いたしました「ロデム」が大きな反響を呼んでおり、設立した意味がでてきたと感じているところです。
 これからベーダ国際ロボット開発センターとして取組まなければ課題は多くあります。私はまず「現場に必要なものを早く開発する」ことが大切だと思っています。
幸いベーダ国際ロボット開発センターには、インキュベーションセンターとして様々なトップレベルの技術研究をされている先生方がメンバーにいますし、それを具体的なカタチに完成させ得る技術とノウハウを持ったテムザックという企業が参加しています。
 私たち医学の立場からのニーズを汲み上げ、本当に使い易い、高齢者や障害者、患者さんに役立つロボットを、このベーダ国際ロボット開発センターで次から次へと開発したいと思っていますし、それが私たちの責任だと思います。
 話しは変わりますが、政権交代があり予算の執行が心配でしたが、新政権での査定も無事通り、申請していた「九州大学先端融合医療研究開発センター」の設立がようやく決まりました。
 医療と新しい技術の融合と実用化を促進するための組織ですが、アイデア交流から臨床試験、実用化に必要なシステムの研究などを、このセンターで進める予定です。
 ベーダ国際ロボット開発センターで開発したロボットを、この九州大学先端融合医療研究開発センターで臨床試験を行ない、厚生労働省などでの認可に必要なデータをそろえていくことで、日本での自律型ロボットの実用化をスピードアップできると期待しています。
 ベーダ国際ロボット開発センターとしても、もっとその存在意義を国内で広め、東の「産業総合研究所」に対して、ロボット開発なら西の「ベーダ国際ロボット開発センター」だと言われるぐらいの実績を積み上げ、大型プロジェクト予算を獲得していかなければならないと思います。
 もちろん国内だけでなく、世界中の研究者や事業家のパートナーと、これから本当に役立つロボットの開発をこの福岡の地で進めていこうと思っています。
 ぜひ地元、九州、福岡の皆さまからのご支援をお願い申し上げます。

(了)

【松尾 潤二】


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