実はこの映画は全くのフィクションというものではなく、アメリカ国防総省がまとめた「急激な環境変動のシナリオとアメリカの国家的安全保障への影響」と題するレポートを下敷きにしていた。実際にこの未来予測のレポートをまとめたのはカリフォルニアに本社を構えるグローバル・ビジネス・ネットワーク社であった。
同社の社長のピーター・シュワルツ氏は拙著『未来ビジネスを読む』(光文社ペーパーバックス)でも紹介したロイヤル・ダッチ・シェル出身の未来研究者である。CIAの顧問も務め、アメリカの長期戦略に大きな影響力を有している人物である。
大方の認識や予想を覆す未来シナリオであったため、国防総省ではこのレポートの内容を極秘扱いにしていた。ところが、2004年、イギリスの「オブザーバー紙」がすっぱ抜いたため、そのレポートの存在と衝撃的な内容が一部公になったわけである。
これにヒントを得て、ハリウッドでは映画化に踏み切ったと言われている。この映画ではわずか数日間で氷河期に突入したため、アメリカはじめ高緯度地帯の国々ではその対応が間に合わず、多くの人々がパニック状態に陥る姿が描き出されていた。
しかし、実際のペンタゴン・レポートでは氷河期への移行には10年前後の時間がかかると分析されていた。もちろん、最初は通常の異常気象として始まり、徐々に加速し最終的には急激な気候変動が地球全体を覆うというのがそのシナリオであった。いずれにせよ、温暖化から氷河期へという180度の大転換が生じることになれば、我々の日常生活や経済活動も瞬く間に悲惨な状況に追い込まれることは間違いないだろう。
【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。
ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊はオバマ新政権の環境エネルギー戦略と日本への影響を分析した『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)。近刊には『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。
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