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山水建設への遺書(40)  社長の仕事―その5/野口孫子 氏
経済小説
2009年10月30日 08:00

社長の仕事5

 組織というものはスタートした時点から、会長、社長が変わった時点から腐り始めるものである。
 「問題ありません」、「異常ありません」という部下の報告を鵜呑みにしていると、大きな墓穴を掘ることになるのだ。部下は都合の悪いことは隠したがるもので、社長自身が問題点に気がつかなければ、誰も見つけない。会長、社長の前では、「この計画は達成します」と担当部署の責任者は言うものである。それを信じ、会社は予定通り達成できると安心しているようでは、トップは務まらない。

 市場は刻々と変化している、現に昨年、サブプライムローンの問題がアメリカで発生。外資が日本への不動産投資資金を海外や本国に引き始めているときにいち早く気が付き、その時点で対策を打っていたならば、山水建設はその後大きな不動産投資をストップし、不良資産化の増大を防げたと思われる。
 世界はそのときはまだ、ロンドンやドバイ、モスクワ、ブラジル、オーストラリアなどで不動産投資は大活況、沸騰していた。たしかに、この時期での判断としては難しかったかもしれない。しかし、この結果責任は担当部署の役員の責任でなく、大きな視点で見通せる立場である会長、社長の責任だと認識せねばならない。

 会長、社長にはそのグローバルな変化を見逃さない眼力が必要であるし、今後の地域の発展、市場の動向、技術の革新、資源の動向、産業構造の変化、環境対策への技術革新などの変化を察知し、成長力を見極め、大きく舵を切ることも重要な仕事である。
 それを怠ると、経営の根幹を揺るがすことになることを理解せねばならない。
 会長、社長という椅子に安住し、営業本部長のレベルでしか市場の変化を見通せなかった結果が、今日の業績不振と不良資産の増加につながっていると思い知るべきである。
 会長、社長として、威張ることなく、高い志を掲げ、常に第一線に立って緊張感を失わずに会社を引っ張っていくことができていたならば、今日の結果は違ったものになっていたと思われる。

~つづく~

(これはフィクションであり、事実に基づいたものではありません)


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