自民党にどれほどのパワーが残っているかは甚だ疑問だが、鳩山由起夫首相追及に虎視眈々の谷垣自民がネタにするのは、「故人献金」=個人献金問題。故人も含め、献金もしていないのに献金者扱いされた人が続々発覚するというバカバカしさで、原資は鳩山氏本人の資産。利権絡みの「ダーティさ」がないとはいえ、政治資金規制法違反は明白。東京地検も関係者の事情聴取を進めているため、首相の心中も穏やかではないはず。その焦点は、「原資」だ。
<財団管理だったはずの『鳩山会館』有料化の謎>
それにしても驚かされたのが、先に公開された閣僚資産にみる鳩山氏の超資産家ぶりだ。土地・建物あわせて10件の不動産の課税標準額が約4億円。定期預金8億7,000万円を含む、国債や信託などの金融資産だけで10億円強。これに、ブリヂストン株350万株をはじめとする10数社の保有株式の時価総額は数十億円になる。兄の由起夫氏がこれなら、弟の邦夫氏(自民党衆院議員)も同様だろう。
「鳩山兄弟の資産の多くは、母親の安子さんを通じて実家のブリチストン創業者・石橋家からの贈与や相続でしょう。石橋、鳩山どっちからにしても、安子、由起夫、邦夫ともに莫大な相続税や贈与税がかかったはずだし、毎年払う固定資産税、所得税も大変だろう。それなりの税金対策をしているとは思うけれど、不可解なのが『鳩山会館』。あれは一般に無料開放することを条件に、財団による管理が認められたはずなのに、いつの間にか有料になっているのはおかしい」というのは、故・重宗雄三元参院議長秘書官を務めた東京新聞OBの村本信孝氏。同氏は東京文京区の通称「音羽御殿」、現在の『鳩山会館』の近隣住民でもあり、鳩山家の主治医などとも交流がある。
鳩山会館は、由起夫氏の祖父である故・鳩山一郎元首相の居宅だったところ。文京区音羽の高台に英国風の瀟洒な邸宅と庭があり、長崎のグラバー邸感覚で訪れる人が多い。「鳩山会館」としてホームページもあり(www.hatoyamakaikan.com/)、財団法人としての運営をうかがわせるが、同会館名での法人登記はない。
ただ、同所にはかつて、一郎氏が死去した1959(昭和34)年に設立した文部省認可の財団法人・日本友愛青年協会の本部が置かれていた。同協会は、一郎氏が存命中の53(昭和28)年に創設した『友愛青年同志会』という、青年育成を目的とする任意団体が母体。現在は同じ文京区の小石川に本部を置いているが、財団設立から30年ぐらいは鳩山邸が本部だった。
(つづく)
恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。
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