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特別取材

自律型ロボットの実用化・産業化は本格的に進むのか?(2)
特別取材
2009年10月20日 08:00

―テムザックの動きを中心とした同時代レポート

《「ロデム」は自律型ならではの発想を持つテムザックの高本社長と、医療現場での高齢者や患者の苦労を知る高杉博士の交流があって生まれた》

 テムザックやロボット研究者により設立された「ベーダ国際ロボット開発センター」として8月26日に発表したのが、ユニバーサルビークル「ロデム」である。
(ロデムの詳しい資料は下記サイトに)
http://www.tmsuk.co.jp/admin_tools/data/090916_1.pdf

ユニバーサルビークル「ロデム」

 ロデムは、ロボットと言うよりも、ロボット技術を応用した新しい移動手段だと言ってもいいだろう。
 これまで足腰の不自由な高齢者や障害者、入院患者などが、ベッドからトイレなど自分が行きたいところへ行くためには、介護者に抱きかかえられたり、誰か第三者に支えられて、まず移動用の車椅子に乗り移ることが必要で、ベッドから車椅子に乗り移ること自体が大変な作業であった。
 介護者には物理的・体力的にかなりの負担がかかり、移動する本人には他人に依存しなければいけないという精神的な負担が大きかった。
 実はベーダ国際ロボット開発センターの設立以前の昨年末より、テムザックの高本社長と九州大学病院リハビリテーション部の高杉博士が中心となり、高齢者や障害者にとって乗り移りの簡単な、ロボット技術をベースとした移動手段の開発プロジェクトが進められていた。

テムザック高本社長九州大学高杉博士

 医療介護現場でのニーズや問題点分析と、ロボット技術の専門家がクロスオーバーすることで、今までにない発想が生まれた。
これまでベッドから車椅子に乗り移るには、身体の向きを大きく変えながら体重を浮かしてお尻から座り込む形で移動しなければならなかった。
 ロデムは、前向きに少し重心を移すだけでベッドから乗り移ることができ、ある程度上半身に力のある人なら、介護者に頼る必要はなく、自分ひとりで簡単に移動ができるようになっている。
 仕組み自体は非常に簡単なものであるが、そこにはロボット技術者らしい人間の動きの合理的な分析が発想の原点にある。
これまで多くの大手企業を含む研究者が、高齢者や障害者介護を助ける乗り移り手段が必要だとして、通常の車椅子に乗り移らせるために、機械仕掛けで人間を抱きかかえる仕組みを開発してきていた。しかしこうした「産業用ロボット的」技術は、大掛かりでスペースも必要なうえ、コストがかかるので実用化が進まなかった。
 ロデムは自律型ならではの発想を持つテムザックの高本社長と、医療現場での高齢者や患者の苦労を知る高杉博士との交流があって生まれた「コロンブスの卵」ロボットである。

(つづく)

【松尾 潤二】


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