『飽くなき権力への執着』の発刊
「Net-IB」で連載していた経済小説『飽くなき権力への執着』(野口孫子著)を、先月30日、弊社で発刊した。著者の野口孫子氏は「権力志向の強いトップの病理、恐怖による権力は、長続きしない」と切り捨てる。そしてこの本で著者は「日本を代表する住宅会社『山水建設』。その新社長就任をめぐって繰り広げられる、葛藤と相克の人間模様。あくまでも権力の座にしがみつこうとする、欲に塗れた俗人の謀略劇。人間の妄念とは、これほどまでに醜いものなのか――今問われている経営者の品格・人間性にも、警鐘を鳴らす」と力説されている。傲慢になれば、大企業でも一瞬にして地獄に転落するということを警告しているのだ。
1兆円企業でも一夜にして昇天する時代
筆者はこの書物の《解説》において、『1兆円企業でも一夜にして昇天する時代』と題して、下記のように寄稿した。
(以下、引用)
<JALは国有管理へ>
JALは1兆円企業をはるかに超えた、連結で2兆円を超す企業であった。2007年3月期売上2兆3,020億円、08年3月期は2兆2,300億円に減った。09年3月期においては、1兆9,500億円と、ついに2兆円を割ってしまったのだ。経常利益で822億円の赤字に転落してしまった。無策の状態では、年末には資金ショートする危険性が高まっている。倒産させないためには、まさに国有化するしかない瀬戸際にある。
倒産に至る原因として様々な外的要因を語られているが、根本は経営陣の無責任体制に帰結する。長年にわたって組織改革を怠ってきたツケが、一挙に爆発しているのだ。社会正義派の作家・山崎豊子が、『沈まぬ太陽』を世に送り出しベストセラーになった。参考材料はJALであったことは周知の通りだ。この書籍からも、JALの無責任経営の伝統の形成は、30年以上前にさかのぼる必要があることが一目瞭然としている。知るほどに愕然とする。平成の動乱時代には、1兆円企業であれ一夜にして倒産の憂き目に会う懸念がある。
<内向きの組織の山水建設の破綻は近い>
山水建設の創業者は稀有な統率力を持ったリーダーというだけでなく、理念を持った人格者であった。この偉大な創業者が亡くなって10年もすれば、組織は変質する。時代の流れに乗っているときであれば、勢いで業績は伸びる。内向きの経営者の限界は露呈されない。社員たちも、儲けの分け前を頂戴できるから安心している。
ところがだ。暗転時代を迎えると、お客を蔑にしてきた矛盾が破裂する。お客が振り返らなくなったときに、社員たちは不安を増幅させる。内弁慶の権力者に批判を向ける。だが、行動に移せるだけの度胸はない。権力者は自分の経営者としての責任を棚にあげて、周囲の幹部たちを追及するしか能がないのが現実だ。
近年、1兆円規模の山水建設は破綻の方向へ走っているように思える。
(以上、引用)
JALや山水建設ばかりでなかろう!!1兆円規模の企業の倒産は、今後続出していく。無責任な経営者たちは世のなかにごろごろいるものである。こういう会社は、本当に粘りなく一瞬にして地獄にはまってゆくのだ。
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