企業を救い、労働者を救う「竹ビジネス」
水と緑に恵まれた福岡県南部の八女市と立花町。お茶の産地としても有名であるこの地は、日本有数のタケノコ産地としても知られている。八女市のキタジマ食品(株)は、国産タケノコの加工食品メーカーとして全国的にも有名であった。しかし、同社の名前を聞いて、「おやっ」と思った方々もいるだろう。今年3月、突然の「産地偽装の公表」で話題となったからである。
同社のタケノコ加工事業において、中国産タケノコを国産と偽って販売していたことを自ら発表。久留米市役所で行なわれた記者会見で、同社・北島隆彦社長は「消費者の信頼を裏切って申し訳ない」と謝罪した。偽装は、決して許されるものではない。食品偽装が社会問題化するなかで、事実を公表することで大きな代償を負わなければならないことは承知の上での発表だった。
自らが犯した罪を公表してまでも北島社長がやりたかったこと、それは竹を知り尽くした食品メーカーならではの、“竹ビジネス”であった。
「竹が秘めた可能性は無限大。食用のみならず、燃料にも、肥料にもなる。しかも、自然から生まれ出るものなので、地球に優しくエコである。そして農家も、仕事が減って事業の存続まで危ぶまれる企業も、救うことができる」(北島社長)。
構想12年、実行に移して7年、一部の商品化に成功して3年。練りに練って、国や自治体からもお墨付きをもらったが、今、実行できる段階にまで来ている。
しかし、このビジネスには多額の資金が必要である。これまでに投じた費用は、総額7億円。実現寸前で計画を中断せざるをえない状況に直面したこともあった。だが、北島社長はくじけない。それは北島社長が描く竹ビジネスが今後、日本の産業の活性化への起爆剤となることに自信を持っているからである。
竹ビジネスが、町を救い、会社を救い、失業者を救い、そして地球をも救う。会社は苦しいが、夢に満ち溢れた社長の表情はとても明るかった。
【矢野 寛之】
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