竹林の環境問題を解決する
キタジマ竹コージェネレーションシステム
春が旬のタケノコは、地上から芽が出て3日も経てばかなりの大きさとなり、1週間で背丈の高さほどになるという。日本最古とされる物語「竹取物語」では、光る竹のなかにいた3寸のかぐや姫が、わずか3カ月で年頃の女性となった。これは、竹が早く育つ植物であることと大きく関係していると思われる。竹は農地に移植すれば3年で立派な林となる。一般の樹木と比べても成長のスピードが著しく早い。しかも、竹は枯渇しないのが特長で、雨水だけでも太るたくましい植物なのである。
しかし、問題もある。成長が早くて気候や湿度も関係がなく、光さえあればすぐに大きくなるため、短期間で拡大して竹林となることから、森林環境の破壊にもつながることが以前から問題視されているのである。林野庁や地方自治体も、山の保全のために毎年多額の費用をかけてメンテナンスをしている。竹林が放置され続けると、里山が荒廃するからだ。竹林被害の代表的な例として、里山の荒廃のほかに、竹林の下の水田は日照時間が少なくなり、米の育ちが悪くなることが挙げられる。また、竹林はイノシシの隠れ家にもなり、実際にイノシシ被害が続発するなどの事態を招くこともある。保全にあたる地主の高齢化も問題となっている。
そこで北島社長は、「逆転の発想」でこの繁殖する竹をビジネスにしようと考えた。それは『キタジマ竹コージェネレーション』、いわゆる竹エネルギーの開発である。竹をエネルギー資源に転換することができれば、環境保全にも繋がり、石油に依存した経済からも脱却できるというものだった。竹酢液や竹炭など、竹の加工品は世に多く出ているが、竹で燃料や電力などのエネルギーを作ろうという人は、今までにあまりいなかった。
「現在でも、竹を伐採する際には、仕事が激減した地元の建設業者の方々にお願いしています。建設会社の社長からも『仕事がなくて従業員を遊ばせるくらいならありがたい』と言われるほどです。需要が減少し、廃業しようとしていた竹の加工会社には、竹チップの製造を依頼しています。私の竹ビジネスが浸透すれば、間違いなく町全体が潤うことになる」と北島社長は語った。同社では、まず、その足掛かりとして、2006年に「竹堆肥」、「竹の土」を開発した。
【矢野 寛之】
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