竹堆肥で作った野菜は驚くほど甘い
「竹堆肥」は、若竹と竹の皮が配合された特殊な肥料である。ぼかし肥で自然に優しく、牛糞堆肥のような嫌な臭いもない。筆者も実際に匂いを嗅いでみたが、いやな匂いはなかった。初心者にも使いやすく、農業初体験の人たちでも気兼ねなく使える。「竹の土」は重量も軽く、竹の土が入った鉢を若い女性でも片手で簡単に持ち運びできるほどだ。「これが土か?」と疑ってしまうほどである。そんな竹堆肥、竹の土を使って育てた野菜は大きく育つことで知られ、農家の人たちも一目置く存在となっている。これらに含まれる若竹や竹の皮には、「カイネチン」という物質が多く含まれており、これが野菜の成長を促進させる。根菌微生物も豊富になるため、養分の供給もスムーズになり、活力のある根を作ることが可能となる。また、抗菌作用をも含むため、病害虫がつきにくい。
実際に筆者も、同社が運営する福岡県うきは市吉井町のビニールハウスを訪問した。そこはカラーピーマン畑であったが、身が太く、たくさん茂っているのがよく分かった。この畑の農作物はほとんど農薬は使わず、竹堆肥を使って大きくしたという。通常のピーマンのつるは150cm前後である。だが、竹堆肥を使ったピーマンのつるは200cmを超えんばかりの勢いだ。1つ、口にしてみた。身は肉厚で甘かった。生でピーマンを食べたのは初めてであったが、自然堆肥の力で野菜本来の美味さが引き出されていることを体感した瞬間であった。竹堆肥を使って作った野菜は、季節や気候を気にせずに伸び伸びと育つ。「従来、ピーマンは夏場が弱く肉付きも悪かったが、これを使えばたくましくなる」と北島社長は語る。10haの農地であれば、普通ならば年間8トン収穫できるカラーピーマンも、竹堆肥を使えば年間10~12トン収穫が可能になるという。
竹堆肥は牛糞よりも3倍のコストがかかり、年間で10万円近くの経費増となる。しかし、その10万円がもたらしてくれる天の恵みは大きく、従来よりも生産量が上がることで、経費の増加分は十分にカバーできるようだ。現在、福岡県立花町内でこの農法を用いた生産を行なっているのは22軒。そのネットワークは福岡県内、長崎、その他九州全土に及び、着実に使用者が増加している。近い将来、竹堆肥や竹の土を使った、いわば「キタジマ農法」が、日本の農業を変える可能性をも秘めている。
【矢野 寛之】
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