しかし、天才投資家バフェット氏が肩入れをしているという報道がなされた直後から同社の株はウナギ登りで急上昇を遂げており、資金面でも大きな余裕をもったBYDが自前の設計デザインで大きな前進を遂げるに違いない。2009年1月のデトロイトでのモーターショー、4月の上海でのモーターショーのいずれにおいても、BYDは自前の電気自動車を精力的に出展した。2009年中には家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車を製品化すると発表している。さらには、ドイツのフォルクスワーゲンと電気自動車の研究開発面で戦略的な提携を発表した。
そうした積極姿勢を好感し、バフェット氏は毎年恒例のバークシャー・ハサウェイの株主総会の会場でBYDのデモ車の展示を行った。自らが試乗し、その感想を聞かれるや「すばらしい乗り心地だ。このまま運転し、女の子を2~3人ひっかけてこようと思ったほどだ。中国はこれから最も投資活動が期待できるマーケットになるだろう。中国の成長は始まったばかりだ。数年前までBYDという会社の存在すら知らなかった。今後は中国での有望企業の発掘に積極的に取り組みたい。今後10年で中国の株式市場は必ず世界の頂点に達する」と語った。
また、バークシャー・ハサウェイの副会長でもあるマンガー氏も「中国は世界で最も頼りがいのある金融システムを生み出している。現在の実力はまだまだ世界レベルではないが、今後最も確実な発展が期待できる。中国は米国債を大量に保有しているが、アメリカ経済の先行きを見通し、こうした米国債をより有効な新産業の開発にシフトすべきだと考え始めており、それは正しい判断だといえよう」とバフェット氏と歩調を合せる。
バフェット氏とマンガー氏の“史上最高齢にして最強を誇る投資家チーム”にとって中国のBYDは新たな時代の頼もしい市場の牽引車と映っているようだ。バフェット氏の会社からは数多くのヘッジファンドが株主としてその恩恵に浴している。ニューヨークに本拠を構えるヘッジファンド、アクアマリン・ファンドもそうした1社である。
【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。
ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊はオバマ新政権の環境エネルギー戦略と日本への影響を分析した『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)。近刊には『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。
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