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特別取材

暴力団との交友関係が表面化 経営が危機に陥る~(株)大島組(下)
特別取材
2009年11月13日 08:00

[新シリーズ・激変時代のリスクヘッジ考察(2)]

全国に先駆けて 県が暴力団排除条例制定

 一方で業界関係者は、工事を推進する上で「暴力団関係者との接点は避けて通れない」と指摘する。「工事現場の資材で怪我をした。誠意を見せろ」とか「下請けに入らせろ」と言って接触してくるなど、各社の経験談は枚挙に暇がない。実際に軟禁された経験を持つ社長も存在する。また、「永い付き合いの友人が暴力団関係者となった場合に、『指名停止措置要件にあたる』として、突然一切の交流を絶つのはむずかしい」(業界関係者)。一度交流を持ってしまえば、関係を断ち切ることが非常に困難なのは業界の共通した認識だ。
 こうしたなかで今年10月13日、福岡県議会で、暴力団対策をめぐって事業者に罰則を定めた全国初となる条例を可決した。来年4月から施工される「暴力団排除条例」である。暴力団に資金提供した企業や個人に、懲役刑や罰金が科されることになる。暴力団の威力を利用する目的で、金品などの利益の供与をする(暴力団に資金提供して地上げをさせるなど)と1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される。また、暴力団に協力する目的で利益の供与をする(過剰な値引きやみかじめ料の支払いなど)ことも禁止し、違反すると是正勧告や公表の対象となる。いわば「暴力団との縁を断ち切る」ことが求められる条例である。

処分により 業績半減以下の可能性も

 大島組の08年7月期の完工高は12億9,331万円。そのうち約43%にあたる5億6,510万円分が、公共工事の元請工事である。07年7月期も、13億9,027万円の完工高に対して約30%の4億2,639万円が官庁からの元請受注である。今後1年間、これらの受注が全く取れなくなる。懸念されるのはその他の下請け工事への影響である。「こうした事件が表面化すれば、官庁工事を受注した業者が指名停止を受けた業者に下請け発注しにくくなる」と同業者は指摘する。「行政の縛りが厳しくなれば、発注したくてもできなくなる」というのだ。大島組は別にグループ企業を保有しており、そちらでの受注活動を模索することが予想されるが、大島組とではランクが異なる。官庁、民間でどれだけ受注がなされるかは未知数だ。08年7月期段階での有利子負債は6,536万円に収まっており、緊急な資金調達は迫られていないが、陣容を維持するには膨大な負担がのしかかる。

変化への対応の遅れが 企業経営を窮地に

 大島代表のマネジメントは、典型的な権限委譲型である。営業、管理などを有能な人材に託す手法で、長年に渡って実績を残してきた。一方で、変わりゆく時代を認識し、手を打っておけば今回の事態にいたらなかった。平成3年に暴力団対策法が初めて施行されて以降、改正が重ねられて取り組みは厳しさを増してきた。福岡県には全国で最も多い5つの指定暴力団が存在する。今回の暴力団排除条例の制定は、県警がこれまで以上に暴力団対策に本気で取り組むことのあらわれに他ならない。来年4月の施行に向けて、今後さらに取り組みは本格化していく。見方によっては、条例を口実に金品の要求を断れるようになった。裏を返せば、背いた場合は厳しい措置がなされる。
 現在の企業経営には、変わりゆく時代にアンテナを張り、迅速な対応を進める。そのため、場合によっては世代交代も迷わず進めることが必要な時代となったことを示す事件だった。

(了)


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