九州地方整備局発注『博多港(須崎ふ頭地区)泊地(-12m)浚渫工事(その2)』(以下、『その2』)の着工遅れは、博多港の関係漁協から、工事による濁りが生じ漁場に影響が出るとのクレームが付けられたためと分かった。しかし、この工期延長理由には、報じてきたとおりいくつもの疑念が生じる。汚濁拡散防止策が十分に考慮された上での工事である以上、漁場に影響が出ることは考えにくいのである。そして、技術的な問題の他にも工事をストップさせた漁協側の理由には疑問が残るのである。
同工事の第1次分にあたる『博多港(須崎ふ頭地区)泊地(-12m)浚渫工事』は「若築建設」が受注した。入札日は昨年6月16日であり、「宮川・淺川経常建設共同企業体」が『その2』を落札する約4か月前。つまり着工が1年遅れた『その2』の入札前後までは「若築建設」による浚渫工事が行われていたのである。しかし、その工事には何のクレームも付けられなかったという(九州地方整備局の説明による)。
問題の浚渫工事と若築建設が受注した工事の施工箇所は、ほぼ同一海域である。(下図参照。円内がふたつの浚渫工事の施工箇所)『その2』にだけクレームがつくことは極めて不自然なのだ。
九州地方整備局に確認したところ、クレームをつけた漁協側からの公式な申し入れ文書はなく、口頭によるものだったという。国の工事が、口頭での工事中止申し入れ程度で1年もストップするとは思えない。しかも、『その2』は関係漁協からの合意を得られなかったとして2度にわたり工期変更を行っている。2度目の「契約変更理由書」が下記の文書である。
文書には「工事再開に向け漁協関係者との調整により平成21年3月末に4月からの工事再開で内諾を得られたため、平成21年4月20日からの工事再開で話を進めていたが、当日になっても正式な同意は得られず、引き続き一時中止の処理を行った」とある。
つまり、いったん浚渫工事に同意した漁協側が、工事再開の期日になって、またゴネたということだ。どう考えてもおかしい。
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