売場活性化の一方で、売上げ、利益は減少。 PBは流通不況の福音にはならない。
5. 日進月歩で質が向上するPB
振り返ってみると、60年~80年代のPB開発は、NBとの比較対象商品であったり、スケールメリットを生かしたオリジナル商品であったりと、多種多様だった。それゆえ、低価格の訴求が第一の目的だったかと言えば、必ずしもそうとはいえない。
しかし、バブル崩壊後の平成不況時や、昨年の世界同時不況以降は、PBの魅力はNBに比べて「価格が安い」ことに尽きると言える。
また、PBが認知されたのは、価格以上に商品の品質向上もある。キャプテンクックや初期の無印良品の場合、例えば醤油は全国一律の商品だった。だから「甘口」好みの九州人にとってはとても受け入れ難かった。
現在、イオンのトップバリュでさえ醤油は、「特急丸大豆」「特急うすくち」「特急低塩」「特選減塩」に、セレクトシリーズの「超特選丸大豆」を加え、5タイプもラインナップされている。消費者のいろんな嗜好に対応するためである。
醤油や味噌のように各地域で味の好みが違う商品は、全国同じ内容でとても売れるはずがない。だから、売るためには地域特性のある商品も増やさざるを得なくなる。そのため、開発側はメーカーの空いたラインを活用し、OEMで商品供給してもらうなど、きめ細かな体制を敷く。小売業ならではの市場調査の結果として、今のPBは生まれているのである。
◎メーカーにとっては諸刃の剣のPB生産
では、メーカーにとってはPB生産は、どういう意味を持つのか。メリットという点では、PBは小売業の100%買い取りになるため、返品も値引きもない。
小売り側も買い取りになるから、きちんとした数量を決めて発注せざるをえず、メーカーは生産計画が立てやすく、閑散期に空いたラインを活用できるなど、工場の稼働率は断然アップする。
また、テレビCMや新聞広告、サンプリングなどの宣伝・販促を行う必要がないので、莫大なプロモーションコストを削減できる。このようなことからメーカーは、PB生産に積極的になるのである。
しかし、メーカーがPBの生産に一生懸命になって、売上げが伸びれば伸びるほど、逆にNBの売上げは下がってしまう。日本市場は少子高齢化にと伴って年々縮小している。
こうしたマーケット事情でパイは限られているのだから、PBが売れるとその反動でNBが売れなくなるという現象が起きてしまう。それがメーカーのジレンマでもある。
今は100年に一度という緊急事態だから、PB生産も止むなしかもしれないが、景気が回復した時に、PB慣れしてしまった消費者のすべてがNBへ回帰するかというと全く不透明と言わざるを得ない。それほどPBはメーカーにとって諸刃の剣なのである。
【剱 英雄】
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