ホテルは観光を映す鏡
対アジア戦略における使命
国際会議(マイス)の誘致
―不況で観光客が減っているなか、これからホテル業界ないし観光業界はどうしていけばよいでしょうか。
徳安 九州に来られるお客さまは圧倒的にアジアからが多いですが、前に申しましたように、ホテルは観光客の動きや求めるものをよく映しだします。
日本全国を見ましても、たとえば虎ノ門にあるホテルオークラ東京では、バブルがはじける前は8割近くが欧米人でした。極端な言い方ですが、館内で日本人を見るのが珍しいくらいだったのです。それがリーマンショック以降、金融やITなどがダメになり、欧米人はほとんどいません。その代わり、日本以外のアジア系の人が増えました。宿泊客に関しては、現在は6.5割くらいになったと思います。あとの1.5割は欧米で残りは日本人です。
そうしたなか、観光に限らず、これから日本はアジア戦略をもっと重視していく必要があるでしょう。これまで外資系のホテルは予約がとれませんでしたが、今では空室が目立つようになってしまいました。ホテルは初期投資がかかりますから、ペイできないという点では大変だと思います。一方で、京都のホテルオークラは稼働率が90%~100%だと聞きました。京都のように世界遺産を持っているところは強いですよね。
―今後は、どのような企画が人を集めることができると考えていますか。
徳安 ホテルの立場からしますと、マイス(MICE)とよばれる国際会議を各ホテルが誘致していくことが大きな企画になるだろうと思います。国際会議というのは、非常に大きな都市力を示すバロメーターで、おおむね1,000名から3,000名くらいの規模になり、たとえば国際政治学会のときは1週間で延べ5,000名にもなりました。そのときは国際会議場などいろいろな施設が使われました。
そうした大きな学会になると、宿泊施設も分散します。著名な方々も来られますからスイートルームをたくさん予約したいと言われますが、1件で300も500もスイートを持つホテルはありせん。そうしたことを勘案して、学会本部は福岡でやろうか、京都でやろうかなどと考えるわけです。
すると、今度は会議と観光が抱き合わせになります。とくに欧米諸国の方はご夫婦で来られることが多いですから、せっかく2人で遠くから来て会議だけで終わらせるより、「京都に行きたい」などといった具合になります。
【文・構成:大根田康介】
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