立ちふさがる壁
今回の件を含めたこれまでの一連の流れについて、HTBの内情をよく知る人物A氏に話を聞いた。「はっきり言ってHMIのときには無理だと思った。地域のビジネスホテル再生には長けているかもしれないが、HTBとはビジネスモデルがまったく異なる。たとえばオリエンタルランドにしてもそうだ。しかし、マーケティング力に優れたHISに関しては歓迎だ。現場で働く社員も期待していると聞く」と語る。
佐世保市とHMIの交渉が決裂した後、ようやく福岡経済界が支援をする動きが見えたとき、着手が遅いと感じた人も少なくなかったのではないか。これに関してA氏は「私個人としては1つのことに対して福岡の主要企業が一丸となって検討してくれたことは大いに評価したい。しかし、彼らが実際にHTBを経営できるかと言えば、そうした経験があるのはホテルならJR九州、パークは間接的に西部ガスくらいだから難しいだろう。野村PFがこれまでいくつかあった支援の手を自ら振り払ってきたのも事実だし、昨年9月にはこうした事態になることはすでに分かっていたはずだ。東園さんは人間としては優れていると思うが、いかんせん野村PFに経営者然とした人間がいない」と憤りを隠さない。
HTBは野村PFの投資先の1つにしか過ぎない。しかしそれでも、約250億円と言われる出資によって何とか存続させてきたことは素直に評価したい。ただ、HTBの経営には、野村PFの資本力だけではどうにもならない大きな壁が何枚も立ちふさがっていた。
その1つが固定資産税だ。HMIのときも、今回のHISとの交渉でもこれがネックとなっている。「通常、こうした税は土地や建物にかかるものだが、HTBは道路から運河にまで税金がかかっている。約9億円だが、これは粗利の約10%に相当するため大きく利益を圧迫している」(A氏)。
加えて、「HTBが抱える必要のないもの、たとえば電気やガス、下水処理場、道路などインフラのメンテナンスまで、本来は自治体が負担すべきコストを丸抱えしているから辛い。理想としは、1つの街づくりに向かうことだ。インフラは自治体が持ち、建物は経営主体がそれぞれ獲得するのがよいだろう」(A氏)とも言う。
【大根田康介】
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