「カジノ特区」認められず
たとえ佐世保市が「上下分離方式」を決め、HIS主導の支援に傾いたとしても、その先に待ち構える困難は多い。とくに集客に関しては、海外からの観光客を期待できない経済状況だ。また、HISは09年10月期連結決算で3,325億円、経常利益60億円を見込む規模の企業で、ホテル運営の実績はあるが、どのようなテーマパークとしての再建案を持つかは未知数である。
そのHISのニュースの影に隠れてあまり報道されなかったが、HTBの「カジノ特区」について、11月12日付で内閣官房地域活性化統合事務局が受け入れられないとする方針を公表した問題がある。
この構想は、長崎県佐世保市など7市、西九州の経済団体を中心に発足した西九州統合型リゾート研究会、佐世保商工会議所らが共同で提案していた。内容は、(1)08年5月に佐世保市が取りまとめた「西九州統合型リゾート構想、地方再生型カジノ導入の意義とビジョン」を基にHTB内に約500億円を投じてカジノホテルを建設する、(2)治安維持という観点から利用できるのはHTBを訪れた外国人観光客に限られる、といったもの。年間22万人の利用を見込んでいた。
今年6月に同事務局に受理され、警察庁、総務省、法務省、国土交通省が審査を行なった。各省庁からは、治安維持、地方財政の健全化、犯罪時の法対応、既存の観光との融和性などの観点から、認定を推す意見が出なかった。
今回の政府方針に対して、「カジノ特区」を推す関係者はさらなる提案を考えているようで、「不認定というわけではなく、新たな提案がでれば再検討する余地はある」(同事務局担当者)という状況だ。「中国などから九州がユニークな島として認知されるにはカジノはアリだと思う。ただ、そうなったとしても外国人向けに限定されるだろう」とA氏は語るが、「カジノ特区」構想に関しては現状厳しいと言わざるを得ない。となれば、入場料やイベントコンテンツなどソフト面の大幅な見直しで、国内の観光客をどれだけつかめるかが大きなカギとなるだろう。
とりあえずは、HISがいかなる結論を出すのか。それによってHTB再建の方向性が大きく変わることは間違いない。
大根田康介
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