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【特集:「観光立国・九州」へ】博多石焼 大阪屋社長 西川ともゑ氏(2)
特別取材
2009年11月27日 13:16

博多石焼 大阪屋社長 西川ともゑ氏
伝えたい、日本の文化
楽しんでもらいたい、日本の食

■□ 「おもてなし」とは □■

 ―観光を受け入れる側には「おもてなしの心」が必要だと、よく言われます。

 西川 この前も福岡市長の吉田宏さんにインタビューしましたが、吉田市長に限らずどこの市長さんも「おもてなしが大切」とおっしゃいます。何が、どこが「おもてなし」なのでしょう。“いらっしゃいませ”とあいさつする、笑顔でお迎えするのは当たり前のことです。私たちが何を期待しながら旅行するのだろうと考えた場合、名所旧跡はもちろんですが、やはりおいしいものを食べ、飲みたいわけですよ。

 『雁の寺』で直木賞作家となり、その後たくさんの作品を著した水上勉さんが「一番のおみやげは、お腹のなかに入れるものは軽く、持って帰るものは重たい。だから、食べたり飲んだりするのが一番のおみやげだ」という言葉を残しています。ですから、私は地方に行くと必ずそこで名物と呼ばれるもの、そこでしか食べられないものを食べます。

 「おもてなし」といった場合、どこにでもあるようなものを出してはいけません。たとえば、中華料理にしてもフランス料理にしても、そこでしか採れない食材を使ってほしい。オリジナリティを持ってほしいですね。

 ある大学の先生が、「日本の子どもたちは日本文化を忘れつつある、日本は崩壊しますよ」とおっしゃっていました。日本の和食は一番エコで体に良いと考えています。海外の人に言ったら怒られるかもしれませんが。和食はお魚文化であり、穀物文化であり、健康食で、日本人の体はそれに合うようにできているわけです。「おもてなし」とはそういうものではないかなと思います。

 日本人、外国人を問わず、博多に来られた方には地酒を楽しんでいただき、海の幸、山の幸を楽しんでいただきたいですね。

 ―最近、いろいろな場面で食に関して「地産地消」という言葉が使われるようになりました。

 西川 私の場合は「土産土法」と言います。その土地でできたものをその土地の方法で食べる、という意味です。たとえば煮物ひとつにしても、博多では「がめ煮」と呼ばれるように地方によって言葉が違います。今の日本人は、こうした日本語を忘れているのです。

 この前、ある30代の方に「行灯(あんどん)とは何ですか」と聞かれました。行灯を知らないのです。「大石内蔵助の昼行灯」と言ってもちっともおもしろくないじゃないですか。要するに、そういう昔ながらの日本語が死語になっています。

 私は、子どもたちにその地方独特の料理名の由来や調理方法を教えていきたいですね。そして、料理を通じてその土地の歴史を知ってもらいたいし、自分たちが生まれた育った故郷に対して愛情と誇りを持ってもらいたいのです。

(つづく)

文・構成:大根田康介


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