27日、西日本新聞朝刊の8・9面に『「福岡市新こども病院」―2014年春、開院―』とタイトルした前面広告が掲載された。この広告は、明らかに税金のムダ遣いである。同時に、いくつかの問題点があることも指摘しておきたい。
福岡市の報道課によれば、同広告の費用として、市報道課の予算から200万円を支出したという。しかし、新こども病院のPFI事業者決定はこれからであり、事業者が決まるかどうかも分からない。さらに、来年には市長選挙も控えている。新市長がこども病院人工島移転を白紙に戻すと言えば、事態が変わることになる。2014年春の新病院開院は、あくまでも予定でしかない。新病院建設が頓挫する可能性がある中、「開院する」と断定するのはいささか早計だろう。同広告には、新病院の人工島移転について、多くの市民が反対しているという現状を打開するため、既成事実を積み重ねようとの市側の狙いが透けて見えるのだ。
次に問題の広告に対し、早くも疑問や批判の声が上がっていることを忘れてはならない。特に、同広告に載せられた市医師会長、福岡地区小児科医会会長、県産婦人科医会・福岡ブロック会会長の意見広告は、それぞれの組織を構成する医師らの声に反している。福岡市内の小児科や産婦人科の医師らの大半が、こども病院人工島移転に強く反対しており、市側との溝は埋まっていない。小児科医会は、組織としてこども病院人工島移転に反対の表明をしていたはずだ。こども病院人工島移転を容認する3人の医師の意見は、個人としてのものであろう。肩書きを入れることで、あたかも医師会や各医会全体が賛成しているかのように見せかけるトリックと言っても過言ではない。ここまで市民を欺く必要があるのだろうか。
さらに、同広告の下欄には、業者の広告が並んでいる。「福岡市新こども病院に期待します」とあるが、なぜこうした文言の企業広告が掲載されているのか疑問に感じる。まさか、新病院における仕事と関連しているとは思いたくはないが…。
吉田宏福岡市長は市長選挙を来年に控え、自身の再選戦略を練り直す時期に来ている。自民党に擦り寄っていたはずの市長が、政権政党となったかつての推薦母体・民主党に再接近していることは明らかなのだが、いかんせん市民の評価は歴代市長の中では最低と言われる。マニフェストへの評価以前に、こども病院問題が重くのしかかっているのは事実だろう。税金投入までして、かつての市長の勤務先である西日本新聞に恩を売るとともに、市民にこども病院人工島移転が間違いではないと思い込ませたかったのかもしれない。
※記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら