福岡市中央区に本社を置く地場マリコン「宮川建設株式会社」と自民党・泉信也参院議員が特別な関係にあることは疑う余地がない。キーマンは同社の元副社長『T氏』である。
T氏は、元九州地方整備局を課長で退官。大手マリコン五洋建設に天下りし福岡県港湾建設協会の事務局長を務めた後、宮川建設副社長に就任した。泉議員の秘書的な存在として知られるうえ、報じてきた実態不明の政治団体『松原の会』の代表者でもある。
泉議員に確認したところ、「(T氏は)秘書ではないが熱心な支援者」(泉議員)。T氏本人も「役所時代の関係から、泉のことは一生懸命応援してきた。当然でしょう」とお互いの関係を隠そうともしない。
T氏をよく知る複数の関係者からは、「Tさんは泉さんが最も信頼する人物で、秘書以上の存在。泉さんが福岡に来た時は、いつも側についていた」。「T氏は『自分は泉の秘書』と公言していたが・・・」などといった証言が寄せられている。
データマックス取材班の質問に対する宮川建設側の回答によれば、T氏が宮川建設副社長に就任したのは「平成11年9月1日」。以来「同20年10月31日」までその職にあったとしている。しかし、不思議なことにT氏は、宮川建設の法人登記を確認する限り「取締役」に就いたことがなく、肩書きだけの「副社長」だったことが明らかになっている。宮川建設は、9年の長期にわたって天下り官僚を役員として遇してきたことになる。
しかし注目すべきは、T氏が元官僚であること以上に、泉議員との関係の深さである。泉議員は福岡県出身。九大卒業後運輸省に入省、港湾畑を歩み第4港湾建設局長大臣官房審議官などを歴任し、1992年の参院選で自民党比例区から立候補し初当選した。その後、新生党、新進党、自由党、保守新党と所属政党を変えるが、03年に自民党に復党。07年には防災・食品安全特命相兼国家公安委員長として入閣を果たす。自民党・二階派の事務総長として、西松建設の違法献金事件で注目を集めたことも記憶に新しい。マリコンにとっては超Aランクの政治家である。
その泉議員の側近とも言うべき元官僚T氏なら、地場マリコンにとっては実に重宝な存在である。T氏を副社長として入社させた背景には、そうした思惑があったとの指摘も出ている。T氏が泉氏の秘書以上の存在で、泉氏の政治活動への便宜を図るため「副社長」の座を与え続けたのなら、事実上の「献金」との疑念も生じる。宮川建設が会社所有の車を泉氏のために使用させていたことはT氏も認めており、これもまた、形を変えた便宜供与だった可能性がある。
(つづく)