【気になる本、ナナメ読み】 vol.17
販売店に押し込まれた配達されない新聞
同著は、webサイト「新聞販売黒書」主宰者でフリージャーナリストの黒薮哲哉氏が長年追い続けてきた、新聞社による「押し紙」問題についてまとめたもの。日本の新聞販売制度のカラクリについて鋭く切り込み、かつ専門分野に踏み込むことなく誰にでも分かる事例で構成されているのが特徴。
「押し紙」問題については、これまで暗黙のうちにその存在がささやかれていたが、それを具体的事例で明らかにしている。当初、著者の黒薮氏は新書でこの問題を扱う予定ではなかったようだが、読売新聞との係争を機に出版に至ったという。
中には驚くべき数字と事例が並んでいる。新聞社とその周辺関係者の間における新聞(部数)の流れに始まり、搬入部数から「押し紙」を引いた実配部数のギャップと補助金の関係、そして各メディアの公表部数の裏側にある構造的問題などだ。
現在は著者と読売が係争中であるため、内容の真実性について評することはしないが、一個人が巨大組織の問題に挑むジャーナリズム魂が見てとれる。マスメディアもその経営方法が根本的に問われている時代だと肌で感じる1冊だ。
【大根田康介】
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