疑惑に揺れる九州地方整備局発注の『博多港(須崎ふ頭地区)泊地(-12m)浚渫工事(第2次)』。昨年10月の入札で宮川建設株式会社(福岡市中央区)と淺川組九州営業所(北九州市小倉南区)で構成される「宮川・淺川経常建設共同企業体」が落札したものの、工期は1年近く延長された。
落札への過程で、昨年10月まで同社副社長を務めていたT氏の存在が注目される。T氏は元九州地方整備局課長で、退職後大手ゼネコン「五洋建設」に入社。福岡県港湾建設協会事務局長も兼務していたという。平成11年9月から宮川建設の副社長に就任している。
取材班は、3回にわたりT氏に話を聞いてきた。2度目の取材でT氏の口から飛び出したのは「宮川建設の仕事やらしていない」という驚きの言葉だった。9年間に及ぶ宮川建設副社長としての毎日は、全く別の目的だったというのである。
T氏への最初の取材で確認したのは、T氏の自宅を主たる事務所としている総務省届出の政治団体「松原の会」についてである。平成14年の設立当時から同会の代表を務めるT氏に、その活動内容と、自民党港湾族の大物・泉信也参議院議員との関係を質すためだった。
この折T氏は、泉議員との関係について「役所の同僚やから、熱心に応援してきた」として、その関係について詳しく説明していた。しかし、「松原の会」については、「名前を貸すよう頼まれただけ」として活動内容は分からないと答えている。頼んだのは誰かという質問に対して、T氏はあっさりとその名を口にする。「Mに頼まれたけんたい」。Mとは泉議員の秘書である。
T氏は泉議員の秘書に頼まれて「松原の会」の代表になったと明言したのだ。経理内容などは事務担当者にでも聞けば分かるとも言う。事務担当者の素性を確認すると「淺川(淺川組)の社員やろ」と、宮川建設が経常建設共同企業体を組んでいる「淺川組」の社員であることまで教えてくれた。しかし、「自分は泉(議員)の秘書はやっていない」と強調する。
この話が崩れたのは2度目の直接取材の時だった。
(つづく)
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